月雪
寒い冬。隣には病弱な上司。
「身体冷やしたらダメっていってるでしょう?早く布団に入ってください」
「せっかくの満月。一緒に見させてくれないか?」
すぐ寒さで頬が紅潮する人。でもやっぱり顔色の悪さは無視できない。
「ダメです。ほら、こんなに手が冷たくなってる・・・冷え性にも程がありますよ?」
自分よりも白く綺麗な手。色に似合って冷え切っている。
「じゃあ、君が暖めてくれたらいいだろう?」
サラッと出る口説き文句。慣れたらどうってことはない。
「馬鹿なこと言ってないで、さっさと寝てください」
そして背中を押して、庵の方に促した。
やはり男と女。ビクともしなかったけれど。
「じゃあ、君も寝るべきじゃないか?」
「夜型健康児に何をいうんですか」
そう言ったら、口を塞いでクスクスため笑いをされた。
この人にこういう風に笑われるのは何故か恥ずかしく感じる。
小ばかにされているような感じじゃなくて、
口では言ってないけど、可愛いなァと言われているような感じがしてしまうから。
「そもそもなんで、俺の庵に来るのかな?やっぱり俺に会いに?」
「ただ単にここから眺める空が気に入ってるだけです」
「素直じゃないけど、そこがまた君のいいところだねー」
また笑われた・・・というより微笑まれた。やっぱりニガテ。
「何度言わせる気ですか?ゴートゥーベットです」
「ハハッ オーイエス・イエス」
そう言って、簾に手をかけ大人しく寝間に入っていったのを見届け、空を見ていた続き。
ここに来て、もう一年。
とゆうことは、卒業して一年。
要するに、十三番隊に所属して一年。
おまけに、さっきの爽やか病弱オジサマと出会って早一年。
「一年って早いなぁ〜」
そりゃもう思い出すだけで三日はかかりそうなくらい、いろんな事あったけど、
辛い事も楽しかった事も悲しかった事も面白かった事も、ぜーんぶ・・・
「絶対隣に隊長がいる・・・・・」
そして、笑っていたり怒ってたり、また寝込んでいたり貧血起こしたり・・・
「なんつー上司・・・・・面白いケド・・・・」
十三人の隊長がいて、自分的見解では一番弱そうに見えて仕方がない。
愚痴じゃない。陰口じゃない。悪口じゃない。
だって面と向かって何回言った事か・・・・
「でも・・・・・・・」
一番優しいと思う。一番、隊員思いだと思う。
それは体験経験済みだから、本当。
優等生タイプ、生徒会長タイプな彼は、誰よりも他人事で頭使ってるから、
だから、病気がちなんじゃないかな。
人は好き勝手生きてナンボだと思うもん、私は。
「でも・・・・そういうところが・・・・・」
ックシュン!!!!
「・・・・・・ひ、冷えてきたかな」
と自分の両手をこすりあわせて、息で暖めた。
そうすると、背中になにか柔らかいものが当たった。
「俺にえらそうな事言って、が風邪引いていたら世話ないだろ?」
「あ・・・・隊長・・・・・ありがとうございます」
「さーこれで暖かくなった。隣に座っていいかな?」
と否応言わせず、座る隊長。
自分の身体が冷えてきたからか、隊長が暖まってきたのか、
すごく心地いい温度だった。
「しょうがないですね・・・・今日だけですよ?」
「ありがとう」
明るい満月。
隊長の銀色の髪の毛が反射して、いい感じに輝いていた。
「うらやましいなぁ」
「?」
「そのツルツルサラサラな髪ですよ」
ついジーっと見入ってしまうくらいの美しさだと思う。
「・・・・そうか?」
「私の髪なんて、ただの黒髪で、くせっけで、朝起きたらホント爆発してますし、隊長の髪の毛に憧れてるんですよー?」
「気にした事はなかったが・・・・俺はの黒髪好きだけど」
「隊長に言われると惨めです」
「そ、そんなこと言うなよ」
「伸ばそうかなー髪ー」
そして、出来るなら乱菊さんのような大人の女にでも・・・・
「そのままでいいんじゃないか?どっちでも好きだけど」
「・・・・・・・・・・・・・・・・!」
あぅ・・・・・・・不意打ちに口説かれました・・・・・
布団があってよかった・・・・・
「ん?どうした、」
「な、なんでもありません!」
やはり慣れているといっても、好きな人に言われるとどーも・・・・・
とりあえず、話題提供!
「って、クリスマスってしってます!?」
「な、なんなんだいきなり」
「現世ではクリスマスってゆう素敵な行事があるんですよ?」
「まーそれなりには知っているが」
「ツリーとか綺麗なんですよー?」
「ほう?」
「ケーキとか食べたり、七面鳥とか・・・・」
「ふむ」
「サンタさんがソリに乗ってプレゼントを運んできてくれるんです」
「・・・・・・」
「私クリスマスってすごい好きなんですよねー」
五年前まで普通の女子高生だった私は、人並みにはクリスマスというものを経験していた。
クリスマスパーティーとかは毎年楽しみにしていたものだった。
「イルミネーションとかもキレイで・・・・」
「なぁ、」
「はい?」
「要するにクリスマス、俺と過ごしたいって事か?」
思わず赤くなる私だったけど、それじゃあ図星ですって言っているようなもんじゃん・・・・
「ち、違います」
「なーんだ」
「・・・・・・・・・・」
「じゃあ、仕切りなおしで。俺と一緒に過ごすってのはどうだろうか?」
「は?」
「は?って何〜。はい!だろ?」
「・・・・・・・・・・・・」
一体、この人はどういう神経して・・・・あぁ、でも・・・・
「はい。は?」
「・・・・・・・・・はい」
「いい子だ!じゃ、話もひと段落ついたところでオヤスミにしようか」
そういって布団を私だけに被せた。
「雪も降ってきたところだし?」
「え・・・・・あれ・・・・・・ホントだ!」
頬に冷たいものが当たる。
落下速度からして雪であることには違いなかった。
満月との奇跡のコラボレーション。
この人といると何故かラッキーなことが起きてしまう。
「ホワイトクリスマス・・・・・になったらいいな?」
「・・・・・・・・・詳しすぎです」
「だから誘ったんだろ?」
「はい?」
「愛する人と過ごしてこそのクリスマスだからな」
そういって手を振りながら立ち去って行ったけれど、
それはそれで寂しい気もしたけど、こんな顔見られないで良かった。
ってゆうか、やっぱり言った当人も結構恥ずかしいんじゃ・・・・・
白い吐息もさっきまでより濃くなっている。
「はぁ〜・・・・さっさと寝よう・・・・・」
部屋に戻るまで誰とも会いませんよーに。
終