宇宙の塵になるか、ただ小さな胸に着ける栄誉勲章を貰うか。
あの戦争で残ったのはただそれだけだったと、そう思うことしかできない。
死ぬか生きるかを考えることが少なくなった今、いつ何が起きようと私は動じないと思う。
タフになったわけじゃない、ただの慣れだと思うけど。
逆に、たわいもないことにココロ動かされたりするかもしれない。
「最近よく笑うようになったじゃん?」
平和過ぎて、花を見ただけで微笑める女の子に戻ったのかもしれない。
transition
「今夜アナタの婚約者と一緒にお食事することになったから」
お母様が言ったこの言葉に、私は数分間硬直した。
「意味不明だ・・・」
父親は評議会委員。お家はもちろん金持ち、大豪邸。
母親は有名ピアニスト。黒髪美人。
そんな両親から生まれた女の子 ・。
「ウチの両親、絶対ズレてる・・・・」
少し口の悪い、ごく普通の18歳の女の子。
分かってたよ?思いっきり二人とも天然だということは。
ってゆうか、よくも娘の結婚話を唐突になにげなく言えるね・・・
いやいやだけど、一応「お嬢」だから仕方ないんだけど。
友達にだってとっくに婚約者いたりするし。
プラントでは当たり前なとこ・・・お嬢の運命。
でも、なんかヤなんだよなァーそういうの。
「これでいいか・・・・・」
我ながらうまく着こなせていると思う。
黒に近い髪の毛には赤とかが似合うのよ。
・・・・・って、これじゃ露出度ありすぎか・・・・?
「まァ いいか」
どうせなら、「こんな美人な子がボクの婚約者なんて!」とか思わせてあげたいじゃないの。
唇にキレイに桃色のリップを塗り、髪の毛をアップにする。
そんな中、普通に友達と遊びに行くとかだったらもっとウキウキできたのに・・・・
久々のオシャレは、まだ見ぬ婚約者のためだなんてなァ〜?
「アイツ、私に婚約者できたァーとか言ったらめちゃくちゃ驚くだろうなァ・・・」
ふとあの男の顔が浮かんだ。幼馴染の
そう、あの男の顔が。
「きっと気に入るわよ?」
どの口がそう言ってるの、お母さん?
「。お前と同じ年のいい青年だ。丁度よかったな」
なにが丁度いいの?お父様?
「私が気に入られるかどうかだと思うけど・・・・・」
「「絶対大丈夫」」
なんでそんな断言できるんだ!?
そんな両親に半ば呆れていた私は、後ろからトボトボついていった。
キレイな超高級レストラン。
私にとっては、おいしいものが食べられる。それだけが、支えだった。
「お腹空いたなァ・・・・?」
もう、婚約者がどうとかよりも、その他のお客様たちがおいしそうに食べている肉に目が行く。
「あら、もう座っていらっしゃるわっ」
「遅れてしまったようだな」
そう両親が言ったあと、ふと向かっているテーブルに目が行った。
丁度、相手の男は背中を向けて座っていた。
私は目を凝らして見ようとする前にお父様が叫んだ。
「すまんね、遅れてしまって!エルスマンくん!」
耳を疑った。「コーディネーターだって聞き間違いくらいするよな!?」と心の中で叫んだ。
だが、座っていた男が立ち上がり振り向いた瞬間、私の脳内はフリーズした。
「ディアッカ!!!!!!!!!!!!!」
あァ、確かにディアッカだった。
10年以上見てきたんだ、間違いない。金髪に色黒・・・・
あのエロさ満天、いけすかない笑顔を私の方に向けている。
「よぅ 」
あァ、ディアッカだ。まぎれもなく、そんな声で私の名を呼ぶのは。
「ね?ビックリでしょ?」
お母様が微笑んだ。
「そうね。ビックリしたよ」
一気に食欲無くすくらいにね。
「ディアッカくんならを任せて大丈夫だな!ガハハ!」
あァ・・・誰か、このおっさんをなんとかしてくれ。
「なに?嬉しすぎて言葉もないって?」
ディアッカが顔面蒼白になっている私に勝ち誇ったようにそう言った。
「ディアッカ・・・・・・・」
「ん?」
ドズッ
「・・・・・・っ!!!」
私の拳がディアッカの腹にのめりこむ。
「「!!!」」
「幼年学校からずっと同じクラスで、その上同僚、同じ隊で・・・・!
なんで18年間も一緒だった奴と結婚しないといけないの!?」
そう。私はザフト軍のあの女王さ・・・・・・じゃなくてイザーク・ジュール指揮する隊の一隊員。
そして、目の前にいるニヤニヤしている コイツも。
「お、お前・・・・・容赦ないパンチして・・・・・いたたた・・・・・」
「こんな婚約者いやでしょ?断ったら?」
そう言い捨てると、私が一番腹が立ついつもの笑みでディアッカは笑った。
「断るわけないだろ〜?俺は以外のウェディングドレスなんて見る気ないし」
そんな言葉をいきなり言われたら、普通の女の子はクラッといって惚れちゃうんだろうケド、
「よくもその口でそんなセリフ言えたもんね?」
今まで、何度アンタが女口説いてるとこ見てきたと思ってるわけ!?
「本命はだって、いつも言ってるだろう?」
「ディアッカの口から出てくるものは全部ウソじゃない!」
「まぁまぁとディアッカくんもそこで終わって、座りなさい」
「そうよ、。お腹空いているから機嫌が悪いのでしょう?」
いつものケンカだ、と両親は思ってると思うけど。
「これだけは譲れないわ。私はディアッカと結婚しない」
「きつい言い方するなァ お前」
ディアッカが頭を掻きながら、私の元に近づいてくる。
「そんなイヤ?」
いつもの寂しそうな顔をする。いつもならこの顔には弱い私。
「そんな顔してもイヤ」
そう言った瞬間、ディアッカは私の手を掴んだ。
「お嬢さん お借りします」
「はっ!?なにちょっと!!離して!!」
「どうぞ、いってらっしゃい」
「そのまま二人でデートでもしてきなさい」
なに?あんた達、それでも私の親なのか!!のん気に食べ始めるな!!
そして、ディアッカは少し強引に、レストランから私を連れ出した。
NEXT?