pleasure
「じゃあ、行ってくんな!!」
「春!ネクタイ曲がってるから!!ちょっと待って!!」
ドアの前でありきたりな新婚夫婦をしちゃってる。バカみたいだけどすっごい幸せなんだ、私たち。
「今日は遅い?」
「ちょっとな?出来るだけ早く帰ってくっから、待ってろよ?」
「分かった。気をつけて、行ってらっしゃいっ」
そして、ありきたり(?)ほっぺたにキス。未だに、やめてくれとテレながら嫌がってるから、当分やめてあげないっ。
ホント、昔っから変わんないんだから。
「おとーさん!いってらっさい!!」
そんな、あんま変わってないながらの私たちにも愛しいわが子が生まれました。
「お〜、いってくんな?夏希!今日もちゃんとママの言うこときいてな?」
名前は黒羽夏希。元気な男の子。
もし秋に生まれていたら秋風にしてたんだけどなぁ〜。
天根くんも秋風にしなよって言ってくれてたんだけど、春は それだけはやめてくれ! って。
結局、ぎりぎりの8月31日に生まれたから夏希。
私に良く似ているって春はゆうんだけど、私は、おもいっきり春のミニバージョンだと思うんだけどなぁ?
「うん!!おかーさんだいすき!!」
「はははっ。じゃあ、今度こそ行ってきます」
「うん、いってらっしゃい。お父さんっ」
黒羽家はいつも日曜日にはどこかへ遊びに行きます。
でも、うちの旦那様は車の運転が嫌いだから、いつも電車か自転車か歩き。
誤解しないように!別に下手なわけじゃないんです。ただ単に、夏希から目を離したくないだけなんだから。
「久しぶりに来たね〜?懐かしいなぁ」
今日のお出かけ場所は、昔いつも見ていた六角中の近くの浜辺。
いつも、春は友達と遊びに来てたよね。寒いのに泳いでたり、テニス部なのにバレーで遊んでたり。
潮干狩り大会も懐かしい。春は一回も優勝出来なかったっけ?
当たり前だけど、そのときの風景も匂いもなにも変わってない。あのときのまま。
唯一の変化は、夏希が仲間に加わったこと。
「おかーさん!かいさんみつけた〜!」
「え?くれるの?ありがとう夏!いい子だね〜」
「お父さんにはくれないのか?」
「大人気ないなぁ。本当に寂しそうな顔しちゃってるし」
「うるせ〜なぁ。いいだろ?だけズルイぞ?」
「わーった!おとーさんにもとってくりゅ!!!」
そして、私の天使はトコトコ走っていった。
「あっ、今度テニス部の同窓会あんだけどお前も来てくれるよな?」
「ホント?いいの?私テニス部じゃないんだけど」
「顔見知りだし、あいつらに会いたがってるしよぉ?ダメか?」
「出来れば、夏希もついてきてくれっといいんだけどよ・・・」
「いいけど。もしかして、天根君?」
「そうなんだよな〜。あいつ、夏希だけは自分のダジャレに笑ってくれるからうれしいんだとよ」
「アハハっ。夏希、天根君のこと好きだからね〜?」
「ほかの皆も、会いたいってさ。てゆうか、見たいんだとよ」
「サエ君とこ、女の子生まれたんだよね?」
「あぁ。優姫ちゃんだろ?メロメロらしいぞ?あいつ」
私たちにいろいろあった分、みんな、いろいろあったんだろうな。すっごく楽しみ。
「おとーさん!!キレイなのあったよ!!」
おもいっきり泥だらけになった手の上にピンク色のちっさい巻貝が乗っていた。
「おっ!よく見つけたな、夏希!!」
「かわいい貝だねエ、夏希」
夏希って名前を呼ぶたびに、私は幸せを感じてる。
たぶん春も同じ。
朝早く起きて作ったお弁当。
たくさん作ってきたはずなのに、二人の王子様が全部たいらげてしまった。
おなかいっぱいの私たちはコンクリート塀の道の上で座った。
「寝ちゃったね、夏」
「つまんね〜なぁ、もっと遊んでやるのによぉ」
「春のために貝探してきたからだよ?」
「ははっ、そうだったな。俺のせいだった!」
春は、私のひざの上で眠っている天使を優しく撫でた。
「こいつが小学生になったら、テニス教えよ」
「でも夏希、やきゅーのひとになる! って言ってたよ?」
「まじか!?しくったな〜。前俺とキャッチボールしたせいか?」
「あれをキャッチボールと呼ぶかは別として、それが原因だと思うよ?」
「だってよー、まだ夏希ラケットもてね〜し、まずはテニスボール触らせようと思ってよ」
「そうだったの?残念でしたぁ〜」
ずっと、なんで普通のゴムボールでやんないのかなって思ってたけど、そういうこんたんがあったのか・・・
24歳になった今も、まだテニス少年なんだね。
「いや!ちゃんと俺がテニスの楽しさ、教えてやるから大丈夫だ!」
そして春は今度の日曜日はダビデと打ってるところ見せて、
夏希にかっこいいとこ見せてテニスに関心を持たせよう作戦を提示した。
まぁ、天根君もその作戦に乗るんだろうって事は、大体想像がつくケド?
でも、まぁ久しぶりに春のテニスしてるとこ見れるから私としては嬉しいけどね。
今でもほんとカッコいい春。だけどやっぱりテニスしているときが一番カッコいい。
「そういえば、ココって俺が・・・・・」
「プロポーズした場所」
「そうだったよな。あれから何年たったんだろうなぁ」
「よく覚えてるよ私!告白されるまえにプロポーズされたっ」
「そうだったっけ?」
「そうだよ!」
春風と過ごした日々は全部覚えてる。
馬鹿なハナシでも、ケンカしたことだって全部。
もちろん、私のひざの上で眠ってる天使との想い出も。
「はぁ〜、久しぶりの潮の匂い。落ち着くぅ〜」
「俺も。また来ような?今度は夏に」
これから、ずっとたくさん増えていく
私の大切な宝物
End
アトガキ
本当に夫にするならバネさんが一番いいと思うんです!本気ですよ?
あくまでイメージですがね・・・・(フフフっ)
ここまで読んでいただいてありがとうございました☆
20050405
いつ書いたんだろう・・・これも恥ずか死ドリ・・・!!ひえ!!
夫婦シリーズの原点だからやけになって置いておきます・・・(え