[PR] この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。
昼飯時。
いつものように、弁当を丸太や樽に座って食べる。
となりには、ルッチがハットリにエサ食わしてて、前にはカクが下っ端に次の作業工程について話している。
もう片方には、ガキ一匹。今日はめずらしく、俺より食べるのが遅かった。
「早く食べきれよ。葉巻吸えねーだろーが」
お前が、飯食ってる時は吸うなっつーから我慢してんだぞ
「・・・・・・・・・あ~うん。ごめんごめん」
ん?やけに、素直だな。
「シズはハンバーグ好きじゃなかったかのぅ?」
カクがシズに聞いた。確か、いつかの夕飯でハンバーグが出たとき、お前 俺の分まで食ってたよな。
「まぁ、スキは好きなんやけど。今日はあんま お腹空いてないかもしれん。パウリー、食べる?」
「おぅっ!ラッキー!!」
その時は気にならなかった。誰も気付かなかった。
at heart
「おい、シズ。手ェ止まってんぞ?」
「あ、うんうん ゴメン。ボーっとしとったわ、アハハハハ」
「気をつけろよ、一応ココは地面から 30メートル だぞ」
マストのてっぺん。今日は俺と一緒にマストの整備。
「落ちたら、ウチ やばいと思う?」
「・・・・・お前だったら死なねーな」
「失礼なやっちゃなぁ~可愛い女の子つかまえてっ」
「片手で丸太持ち上げるやつが、よく言うぜ!」
「多分パウリーも死なんで?バカは死なない・・・・アレ?風邪ひかない の間違い?」
「お前も大概失礼だ」
「マスト職にぴったりなコンビやんかvv」
いつもみたいに、にぃっと笑う。そして、それにつられる。
「ハハッ 落ちてたら仕事にならねーじゃねェか」
そう言った瞬間、シズがいなくなった。
「まさか人が振ってくるとは思わなかった・・・」
「ルルがいなかったら、ぺしゃんこだったかもしれんぞ。パウリー」
「すまねェ・・・・まさかホントに落ちるなんて夢にも思わなかった・・・」
ちょうど下にいたルルに受け止められたにも関わらず、シズは気を失っている。
目を覚まさないシズに、みんな手を止めぞろぞろと集まってきた。
「少し熱かった・・・・」
ルルが寝癖を直しつつ言ったとたん、カクはシズに近づいた。
「何がだ?ルル」
「確かに熱い・・・・・・」
カクはシズのデコに手をつける。そして深くため息をついた。
「風邪・・・・・じゃな」
「まじか!?こいつが?!」
「ポッポー 早く家につれて帰って安静にしないと」
「それじゃあ、ワシがひとっぱしり・・・・・・・・」
「俺がつれて帰る!!」
「パウリー・・・・・じゃが」
「俺がつれて帰る」
「お前よりカクの方が早ェだろ。ワガママ言うな」
ルルが言った。ごもっともな話だ。でも、
今日一日一緒だったってのに、気付いてやれなかったのは、俺。
「俺が行く」
シズに近づく。近くで見ても、まさか高熱だとは思わないほど普通に眠っている。
「わかった」
カクは頷いた。そして、気をつけるんじゃぞ と言った。
両手でシズを担いだ。
「たしかに熱ィな。こいつ、ずっと我慢してやがったのか」
まったく、呆れるぜ。俺自身が。
食堂のばーさんに薬貰って飲ませたあと、シズをおぶって階段をあがる。
「・・・・・・・・・・・・」
今 気付いた。俺はシズの部屋の鍵がどこにあるかわからねェんだよな。
これだったら、カクか誰かの部屋の鍵貰ってくるべきだった。
さすがに俺の部屋は テメェで言うのもなんだが 女を寝かせるにはいささか汚い。
「・・・・・・・いいか?俺の部屋で」
「・・・・・・・・・・・」
「いいかげん、目ェ覚ませ コラ」
203号室。コイツおぶったままでドアノブ掴むのが一番苦労した。
いったんソファーにシズを置き、急いでベットの上の散らかった衣類を片付ける。
「ったく、汚ェな」
最後に残ったティーシャツをベットの下に潜り込ませて、手で払えるだけゴミを払う。
幸い、ちょうど二日前に掃除したばっかだったから まだコレでもキレイな方だ。
「ちょっと、タバコ臭ェけど我慢しろよ」
シズをベットにそっと乗せる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今さらながら、分かった。確かにシズの顔は紅潮していた。
「無理しやがって このバカ」
シズの前髪を撫でる。微かに触れた額はさっきよりも熱はなかった。
薬のせいか。だが、高熱には変わりねェが。
まだ二時だ。明るいじゃねーか、この野郎。
いつもなら、はりきって仕事してる時間だろうが。
せめて 早く、目ェ覚ませ。心配だろうが。オイ
時間を忘れるほど シズを見ていた。
「静かにしてりゃ、女に見えねェこともないような・・・・・」
初めて会ったとき 男と間違えたなんてよぉ
長いまつ毛、華奢な身体、小さな手。どう見ても シズが自分でいつも言っている『可愛い女の子』だ。
普通のヤロウと違うからって、あんな無理するこたァねェだろうが。
「心配させるな、コンニャロー。早く起きろ。熱ぐらい気合で吹っ飛ばせっ」
もしも、このまま目が覚めなかったら・・・・
なに、バカなこと考えてる
もっと早く気付けば良かった 普段と全然元気さが違ってたじゃねェか
今さら 遅ェよ
「オイ 頼むから いつもみてェに笑えよ、シズ」
チ リ リ リ リ リ リ
電伝虫がなった。
「はい・・・・・・」
「おぉ、パウリー。ココにおったんじゃな」
「あぁ」
「シズの部屋に電話しても出なかった。どうせ、部屋に行くまでカギがないことに気付かなかったんじゃろ?」
「う・・・・・・・そうだよ、悪かったなァバカで」
「シズ、どうじゃ?起きたか?」
「いや。ピクリともしねェな。ぐっすり寝てやがる」
「ポッポー 言っておくが シズが寝てるうちに変なことしたら 殺すからな」
「アア!?何言ってやがんだ テメェ ルッチ!」
「俺はハットリだ ポッポー」
俺が電伝虫をにらめつけていると 後ろから細っちい腕が伸びて 受話器を奪った。
「ルッチ?カクさん?ウチ、大丈夫なったから心配せんでいいし。みんなにそう言っといてなvv」
「そうかっ。良かった。今日はゆっくり寝るんじゃぞ?」
「はーいっ」
「バカに何かされたら 思いっきり殴れ ポッポー」
「オッケー オッケー!」
ガチャ
シズは思いっきり身体を伸ばす。
「はァ~よく寝たァ~。ココはパウリーの部屋?」
「・・・・・・・」
「タバコ臭いなァ。ベットで葉巻吸ったらアカンやろ?」
「・・・・・・・」
一気に、全身から力が抜けた。
「はァ~・・・・・・・・・」
「心配かけてゴメンな?」
「心配なんかしてねェ」
「そうですか。さっきパウリーが言ってたと思ったのは 空耳?」
「オマっ!!いつから起きてやがったんだよ!!!」
「結構、まえ」
「いつだ」
「俺がつれて帰るっ! から?」
パウリーは両手で顔を覆った。
「カッコいいことしてくれるやんっ」
「うるせー 寝てろ バカ」
「起きろって言ったんは パウリーやろ?」
こいつっ、完全にからかってやがる!
「愛されてるなァ~?ウチ」
アハハと笑うシズに、一先ず安心した。
それと同時に 初めて、恥ずかしくて死ぬ という思いをした パウリー。
「寝てる間、葉巻吸わんかってんな。愛を感じる~」
「・・・・お前、人をからかうのも大概にしろよ?」
ったく。と呟きながら立ち上がるパウリーは、散らかっている服を踏んで歩き出した。
「えっ、どこ行くん?」
「下にいる。もうそんなに元気になってんだから、俺がいなくてもいーじゃねーか」
「おって」
「はァ?なにいって・・・・・・」
「ココにおってって言うてるねん」
「・・・・・・・・・・ガキじゃあるめーし」
「ガキやの~。だから、ココに座っといて?」
「まったく・・・・・・・・」
こんなにワガママを言うシズを見たのは初めてで、少しビビったり。
「行ったら、ウチ 寂しくて死ぬっ」
「お前はウサギかっ!」
「うん、ウサギ」
「・・・・・・・・・・・くそっ、わーったよ。」
仕方なく座ったが、さっきまで言っていたことを思い出し、さすがにシズの方を向いて座れず、ベットにもたれた。
「お前、ホント根性まがってんな」
「意識はあったけど喋られへんかってんも~ん」
「お前、もう無理すんなよ」
「我慢できてる程度やってんもん。落っこちるまでは」
「倒れてりゃ世話ねーだろうが」
「それはそうか!アハハっ」
「もういい・・・・・静かに寝てろ」
「甘えついでに 手ェ貸して?」
「なっ・・・・・・・・・・」
「寂しくて死ぬ~!!パウリーのせいで死ぬ~!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
仕方なく、後ろにで寝ているシズに手を差し出す。
それをあっちぃ手が握り締めた。
「ガキっ」
「ガキやもーん」
ふいに 俺の後ろ髪を引っ張られた。
「パウリー 今日はありがとうな」
呟く声でやっと聞き取れる程度で、シズは言った。
だが、聞こえないふりをした。
ぜってーこっち向いて寝てやがる。
振り向けもせず、パウリーは俯いた。
こんな顔、お前には見せたくねーし。
どうせなら、最後までカッコつけさせてもらおーじゃねェか。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
いてやる
お前が元気になるまで ずっとそばにいてやるから
早く元気になっちまえ バカ野郎
end