real  intention










「カクさ〜ん、頼みまーす」




毎日のように、大きな声でワシの名前を呼び、ノックもなしに部屋に入ってくる。

いつものことじゃ。




「また書いたのか?」

「今度は頼まれちゃったんです、お船作ってーって!」

「ん?誰にじゃ?」

「可愛い女の子にっ!」

「なるほど。どうりで最近ワシの仕事が減ったわけじゃな?」



はワシの横をスッと通り、ベットにちょこんと座った。

「パウリーの部屋と違って、いつもめっちゃキレーやんなァ?さすがカクさん」

「あやつの部屋は行けば行くほど、散らかっておるからのぅ?」

ワシがため息をついたとたん、は下を向いて笑った。

「なんか、やっぱりカクさんって大人〜」

「パウリーが子供すぎなだけだと思うが?」

「それもあるけど、やっぱりカクさんって大人やわ」

「そんなにワシはじいさんくさいかのぅ?に言われるとちょっとショックじゃ・・・・」





これは本音。





「いい意味で言ったんですよ!!」


急に立って、ワシの袖口を掴む。あわてたは、面白かった。


「ずっと思ってたんじゃが、なんではワシだけに敬語を使うんじゃ?」

「いやぁ〜、なんでなんやろ?なんなんでしょうかね?」


「やっぱりじいさん臭いからか?」

もう一回、首を垂れてみた。

「違いますって〜!!!!!」


今度は下から顔を覗かれた。あんまり可愛いをいじめるのはよそうかの。


「お嬢さん、設計図かしていただけますかな?」

「厳しく、お願いします!」







いつもなら、ワシが作業机の前に座って、がそれを後ろから覗くかたちになる。

じゃが今日はワシのベットに転がり、上に吊ってある昔作った船の模型を眺めていた。



「ホンマ、オトコマエな船ばっかり・・・・めっちゃカッコいいわぁ〜」

「コラコラ、間違ってもココで寝ちゃいかんぞ?ワシが眠れなくなってしまうじゃろ?」

「大丈夫ですって!おもいっきりコーヒー飲んできたしっ」


ワシに向けてピースサインをする


「コーヒーでの眠気がとれるとは思わんが・・・」

「も〜 大丈夫ですって〜!!」

「わかった、わかった。ちょいと待っとれ。すぐ手直しするから」

「は〜い。今日は何がいいですか?」

「じゃあ、ミルクティー」

「かしこまりました〜」


最近やっと飲めるようになって来た、の紅茶。

もう慣れてしまって、自分の入れた紅茶よりもの入れたヤツの方が好きになってしまった今日この頃。


「慣れとは怖いのぅ・・・・」

「なんか言いました?」

「いんや。火には気をつけるんじゃぞ?」

「は〜いっ」


やっと、紅茶の葉や やかんが置いてある場所を把握したせいか、ガチャガチャ音が鳴らなくなった。

これで、キッチンが散らからなくてすむのぅ。


「さて、手直しするか」

そしてワシは机に向かう。







「どうぞっ」

「ありがとう、。はい、手直しできたぞ」

「早いですね〜さすが〜!」

設計用机から、と一緒に二つ並んだ座布団に座り込む。

横目で不安そうに見る。おかまいなしに一口飲む。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・うまい」

「アハッ!よかったァ〜・・・・・」




そんな可愛い笑顔見せてもらえるのなら、ワシはいくらだって言ってやるんじゃが。

じゃが、あんまり言い過ぎると嘘っぽくなってしまうし・・・・



と、馬鹿な事を考えていたら



「カクさーん」

「なんじゃ?」

が三角座りをし、顔を埋めた。

「聞きたいことがあるんですけどいいですか?」

「あらたまって・・・・どうしたんじゃ?」










「カクさんって好きな人いないんですか?」










普段は、「妙に冷静すぎる性格がジジくさい」とパウリーに言われておるワシじゃが、

この時ばかりは驚いた。いや、普通おどろかんか?普通は。

とりあえず、一番いい方法で聞いてみる。


はいるのか?」


「え・・・・・・いや。たくさん、いますけど」

「恋愛感情ではないじゃろ?」

「そうなんですよね〜。結婚したいって思う人はおらんねんな〜」

「ハハッ、結婚はちと話が違うんじゃないか?」

「知識が乏しいんですよ、ウチ。したことないから」

はァ〜と深くため息をつく

「恋かのぅ?」

「したことありますか?」

「ノーコメントじゃなァ・・・・」

「ケチ〜!カクさんのケチ〜!」









「で、急になんじゃ?」

「聞かれたんですよ。好きな人いますか!?って」



敬語なあたり、知ってる輩ではなさそうじゃな。



のファンじゃな?」

「そうですよ。物好きなファンですよねェ」


よく言うのぅ。あれだけ人気があるのに自覚なし。


「許可なく男と付き合うなんて、ワシらは許さんからな?」

「わかっておりますとも、兄貴」


正確には  ワシ  じゃが。




「普通ならいるんですか?女の子って」 

「普通の女の子だったのか?は」

「からかわないで下さいよ〜人がせっかくまじめに話してるのに〜・・・・・」

「ワハハッ まぁ、人それぞれなんだと思うが?。他人は他人」

「そんなもんですか?」

「そんなもんじゃろ?」



ワシが言った答えに、まだ考え込んでいる


ワシはの頭を軽く叩き、撫でた。



「おかしくないから 安心せい。いつかはそんな人が出来る。絶対」

「はあ。でも、一生独り身な気がするんですけど・・・・・・・」


「そのときは ワシがいつでも歓迎してやろう」


「ハハッ ありがとうございます」


本気にとっていないを見て、ワシは笑い返す。

この鈍感さなら、まだまだ安心じゃな。








「そろそろ帰りますね?サンキューでしたっ」

「また いつでも来い」


ドアまで見送り、そう言うとは振り向いた。いたずらな笑顔ではワシの目を見る。


「そんなんゆうたら、毎日でも来ちゃいますよ」

「いつワシがいやと言った?仕事場じゃろくに話もできんのじゃから、暇な時間にこんな話をするのは楽しい」


そんなにワシが微笑みかけると、なぜか少し照れていた。


「それじゃあ、今度はカクさんのハナシが聞きたいです。結構秘密主義じゃないですか?」

「ワシの事なんぞ話しても、面白くないぞ?」

「それはウチが決めることですよっ!またそうやって、言わないつもりなんでしょ?」

の話しをしている方が、ワシとしては面白いんじゃがなァ?」


そう言うとの顔が血の気が抜けたように青白くなった。


「きょ、今日話したことは記憶の彼方に吹き飛ばしてください!そして、パウリー辺りに言うのは勘弁して下さい!」




「俺がなんだって?」




パウリーが大き目の紙袋を片手で担いで、歩いてきた。

「パパ パウリー!?」

「おぉ、パウリー。また行ってたのか?」

「今日はソコソコだったぜ?ホラッ」

紙袋の中のワインを握ってワシらに見せた。数本、そのくらいは入っているよう。

「めずらしいのぅ?明日は雨が降るんじゃないか?」

「うるせーなァ。たまには勝ってもいいじゃねーか!」

「そのお金を、借金返すのになんで使わんの?」

呆れ口調に言ったは、パウリーを睨む。

「そんな怒んなってっ。ホラッ一本分けてやるから」

パウリーが投げたワインボトルをうまく受け取る。その途端の顔は極端に変わった。

「そういうトコロはスキやで〜!あっ でもやっぱり相談相手には、ならんタイプ・・・」

「は?」

「とゆうことでカクさん、今日はどうもっ!」

「いえいえ。じゃあ オヤスミ」

「はい オヤスミなさいっ」

そしてはスタスタ走っていった。ボトルを振り回しながら。



「なんなんだよ アイツ」

「・・・・・・・本当に目に入れても痛くないかもしれん」

「お前 ホント、じいさんだよな」

パウリーは溜息をつき、ポケットからもう一本葉巻を出す。

なかなか火がつかないライターにイライラしているパウリーにワシは笑顔でこう言い返した。



「ワシがずっとそのポジションにいると思っていたら、大きな間違いじゃぞ?」



そういい残し、部屋に戻る。

ふむ。あのパウリーの顔、写真か何かにとっておきたかったのぅ。













まだが口をパクパクさせて笑っているうちは、おとなしくしてるから。



それまではイイ先輩でいてあげようか。



君がオトナになる、その時までは。


























end