make time











今日は仕事は休み。

ウチは本屋に行きたかったから、いろいろ皆に誘われたけど丁重にお断りした。ごめん、みんな!

さすがの、ウォーターセブンの大型書店。見たこともないような程の本が並んでいる。

やっぱり ガレーラカンパニーが有名なこともあって、造船 大工 船関連の本がたくさんある。


「あ、アイスバーグさん!」

雑誌コーナーを回ってみると、何冊かの雑誌の表紙にはアイズバーグさんがおった。

市長でもあり、社長でもあるアイスバーグさん。ウォーターセブンの人気者。

カクさんから聞いたら、もんのすごい実力者らしい。経歴、技術力ともに耳を疑うほどやった。

見るからに、まだそれほど歳もいっていないほうやと思うけど、今までに何百との船を作ってきたらしい。

噂によれば、コレクターもいるほどじゃ 、とカクさんが笑っていた。

でも、



「なんつー自由気ままなコメント・・・・質問に答えれてない・・・・」

とにかく、おもしろいことは変わらんかったけども。

そして、ページをめくった瞬間



「・・・・・・・・・・・・・・!?」

なんでウチの記事が載ってるねん!!



思わず、その雑誌にツッコミをいれてしまった。

「まー!!ちゃんかい!?」

本屋のおばちゃんに声をかけられたけど、名指しだったから驚いた。

「は、はい」

「最近人気だねぇ?」

「?」

「いっぱい記事に載ってるだろう?」

「そうやけど・・・・・なんで?」

「この街じゃあ船大工ってのは、いわゆる有名人だからね!

今まで男ばっかりだったし、可愛い女の子が入ったら、そりゃあトップニュースになるさ!!」

「そんなもんすか?」

「あと ちゃんはいろいろトラブルがつきないからね〜?新聞社がほっとかないさ!!」




トラブル・・・・・・いろいろありすぎて、考えるのが怖いわ。

「おばちゃん、これ頂戴っ」

「さっきの雑誌は買わないのかい?」

「いや、あんなのパウリーとかに見られたら笑われるに決まっとるし・・・だいいち、この写真の写りが許されへんもん!」

「あっはっはっは!!楽しきゃいいやね!!」



最近、よく街を一人で歩くことが多くなったんやけど、市長が市長なだけに、ココの住民は全員底抜けに明るい。

「じゃあ、また買いに来るわっ!」

「あ〜ちょっと待ちな!」

思いっきり首根っこを引っ張られ、少しむせる

「ゲホッ・・・・・!!どないしたん、おばちゃん!?」

「書いてきな!!」







「は?」

本屋のおばちゃんは後ろの方に、グッと親指で差した。

で十枚目さね」

「ウチにこれを書けと?」

見た限り、よぉ〜く知っている名前がチラホラ。

アイスバーグさん、パウリー、カクさん、ルッチ・・・・・・・・・・・ハットリもなん!?


「ウチ、サインなんかしたことないねんけど。いや、それが普通やけどさ・・・・」

「あっはっは!楽しきゃいいじゃないか!パウリーなんか張り切って、三枚も書いてくれたんだよ!!」

「いや、多分それはお金稼ぎだと思うけど・・・・・・・・」

「書いてくれりゃ、その本タダであげるよ!!」「書かせていただきます!!!」





って、仕方なく書いたけども。こんなんでいいんやろうか?

は思わず苦笑い。

「本ありがとうvv  なんのひねりもないけど、こんなんでええの?」

「可愛い字だね!!ありがとうよ!!」





「ンマー!!も人気者になったな?」


聞きなれた口癖と声。

「なんでここにいますの!?社長!!」

「ンマー!なんで分かった!?変装はバッチリのはずだ!!」

「いやいやいや・・・・・・・サングラスかけてニット帽かぶって変装してても、それじゃあ・・・」


変装より、なにより、その口調なんとかしましょうや。


は 「おかしいな」 と本気でどこがおかしいのかを調べている アイスバーグさんを覗き込んだ。



「ところで、ココで何してるんですか?」

「お忍びだっ!!市長として、街を視察しようと思ってな?そしたらを見かけてだな・・・・・」

「・・・・・・・・おおかた カリファさんから逃げて、遊びに来たんやな?」


「ンマー!はエスパーか!?」

「エスパーですっ」

「それはスゴイ!!」


と、意味が分からない会話をしている二人。




「あっはっは!アイスバーグさん久しぶり!!ちゃんにサイン貰っちゃったよ!楽しいね!」

が書いたサイン色紙を高々と掲げられて、少し恥ずかしくなっているを横目に社長は言った。

「ンマー!!せっかくだから俺のとなりに置いてもらえるか!」

「・・・・・・・・・・!?」

「わかったよ!!ちゃん、本当にありがとうね!また来て下さいな!」

カウンター越しに、おばちゃんは大きく手を振った。

「うん、おばちゃんも本アリガトウなぁ!」








そして、本屋から出ていった二人はそのまま一緒に歩いていった。






?」

「なんすか?」

「このあと暇か?」

「暇・・・・・・・・・・ですね」

同僚の誘いを断ってて、こう言うのもなんですが。アハハ

「ンマー!それじゃあ、お忍びデートでも洒落込もうじゃねェか!」

「おー!いいですね!もちろん社長のおごりですから!」

「セクハラだな!!」

「セクハラですね!・・・・・・・・・って、意味わからんから!!!」
















「ニー!ニー!」

とまぁ、二人でヤガラ借りて散歩するだけだけど。

ヤガラはまるで、この街のすべての道を知っているように走っている。いや、泳いでいる。




「アイスバーグさんのブルですか?」

「そうだ。まぁ、本当は貸しブル屋のおっさんから貰ったものだがな」

「ニー!ニー!」

前に座っているアイスバーグさんをペロペロ舐めているヤガラはとても嬉しそう。

「ンマー!くすぐってェ!」

「懐いちゃったんですね?」




ホントみんなに好かれてるな。そして、尊敬もされている。

ウチもそのなかの一人。

この街の市長がアイスバーグさんで良かった。

ガレーラカンパニーの社長がアイスバーグさんで良かった。







和みながら、ウォーターセヴンの街を遊泳しつつ、今日はいろんなことを喋れて楽しかった。

いつも、忙しそうなアイスバーグさん。

(うん、いつも気ままにわがままに仕事してるけど・・・・・)

これで、少しは気分転換になっていてくれたらいい とは思っていた。



















『・・・・・・・・・・・・・・・・・!』



 聞こえたか」

「はい!」

「急げ!」

アイスバーグはヤガラの手綱を握り締めた。


















チュー!チュー!



裏道の細い水路。白いものがバシャバシャ浮かんでいた。

「ネズミが溺れてる!」

みるみるうちに、ネズミは沈んでいった。

、行けるか!?」



はツナギを下半身まで下げて両腕の袖をギュッと括り、

「任しといてください!」

いきおいよく飛び込んだ。






は陸地よりも早いそのスピードで、ネズミをつかみ、すぐに水面に戻った。


「よくやった!こっちにネズミを渡せ!」

アイズバーグはその白ネズミを自分の足の上に乗せ、すぐさま親指で心臓マッサージをした。

がすぐに飛び込んだため、すぐに水を吐き出し、意識をとりもどした。

は胸を撫で下ろす。



「チュー!チュー!!!」




「ありがとう って言ってるみたいですね」

「チュチュー!!」

白ネズミは頭をコクンコクン動かした。

「う〜めっちゃ可愛い〜」

はネズミをすかさず顔元に持っていき、スリスリした。




・・・・・・・・・・・・・・・・・・。




「家で飼おう」

「ホンマ!?」

「チュー?」

ネズミはピョンっとアイスバーグの肩に乗り、そのまま胸ポケットに収まった。

「同意のようですねっ」

「カリファに怒られてしまうな」

「大丈夫ですよ、カリファさんなら!ばっちりカゴとエサ、用意してくれますよ!」




チュー!



気がつくと夕方。ウォーターセブンの夕焼けはいつもキレイ。

水路の水が真っ赤に染まり、中央にある大噴水なんかは見事なものだった。

「ンマー!もうこんな時間か。帰らないといけねェな」

「お休みとれたら、またお付き合いしてもいいですよ?」

「ンマー!嬉しいな!」

「でも、さぼってカリファさん困らしたらダメですからね?」



ハハッと笑って頷き、ヤガラに「の家まで」と言った。
























「今日はどこ行っておったんじゃ?」

カクが疲れきってソファーに寝転がっているの横に座った。

「お前また潜っただろ?ビショビショじゃねェか!さっさと風呂入れ!」

風呂あがり、タオルを肩にかけを小突いた。

「ポッポー この上着、もしかしてアイスバーグさんのか?」

テーブルに置いてあるシマシマ上着を手に取るルッチと、それを不思議そうに見るハットリ。





「うん、今日はアイスバーグさんとデートしてきてん」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





「どしたん?」





(アイスバーグさん・・・・・カリファに言われて、一日中探してたのに・・・・・・)


「油断も隙もない人じゃ・・・・・」

カクがため息をつくと同時に、他の二人も同じくため息をついた。




休みを一日中、社長探しに費やされたあげく、

とのデートで楽しんでいたと思うと、悲しくなった三人であった。





























END