Shall we dance?
いちかばちかで言ってみた。
「お、俺と付き合ってくんねぇか!?」
男、パウリー一世一代の告白・・・・・
ゲジッ
「阿呆、パウリー。そんな顔赤くして言うことではなかろうが」
「ポッポー 右に同く」
二人のつっこみが厳しくパウリーの脳天に直撃。
パウリーは前のめりになりそうになるところを気合で起き上がった。
「何すんだ、てめぇら!!!」
「たかが明日一日、お偉いさんのパーティーに行くだけだろう?」
そう、パウリーは仕事を請け負った大手会社の会長に腕と人柄を気に入られ、
そして明日はその会長の誕生日。
ガレーラカンパニーの社長、アイスバーグと共に誕生パーティーに誘われたのだった。
「で、なんでウチなん?」
「男ばかりだと、やはりダメじゃろ?」
「カリファさん行くんでしょ?」
「まー行くんだけどよォ・・・・」
「ダンスパーティーらしいポッポー」
「ま、まじで!?」
「まじで」
一生をかけてこの腕一本磨いてきた男に、そういう上流階級の知識、
まして女性を従えダンスを踊るという行為を求められても大いに無理のある話である。
「お前よく行ってるらしいじゃねぇか・・・」
「そりゃあ、よく誘われるからなァ・・・でもダンスとか初心者に近いで?」
「いいんじゃよ、。こやつとてプロとなんて踊れんしな」
「どっこいどっこいで丁度いいんだよ」
「ポッポー何がどっこいどっこいだ。リズム感まるでなしな猪突男が」
「否定はしねぇがお前に言われると腹立つ!!クソルッチ!!」
「なるほどなァ・・・」
は腕を組み苦笑した後、思いついたようにパウリーの肩に手を置いた。
「じゃ、今から練習せなアカンね!」
「まじかよ!?」
「だって昼からはお休みやもんねぇ〜」
まー仕方ない。俺のせいでアイスバーグさんに赤っ恥かかせられねぇしなぁ。
「ウチの師匠たちがいるんやもん。ちょーどいいやろ?」
が手のひらでカクとルッチをさした。のダンスの先生、カク先生にロブ・ルッチ先生登場。
「コイツらだったのかよ・・・」
俺がいねぇ間にコソコソ三人で練習していたのかよ。
パウリーは少しイライラした。でも、パーティーは明日。
この危機迫る状況でふてくされている暇なんてない。
「お、お願いします・・・」
「素直でよろしい」
「宜しくな、パウリー」
「ポッポー俺たちだって暇じゃないんだ。さっさと覚えろよ」
「カクだけでいい、カクだけで!」
ペシッ
「先生に向かって何言ってんの!」
の手のひらがパウリーの額を跳ねる。
「だってコイツが・・・・・!!」
「子どもみたいなこと言ってんと・・・ほらほらっ」
そして、パウリーのためのダンスレッスンが始まった。
「ぜってぇヤダ!!」
「なんじゃ。パウリー、これが基本じゃぞ?」
カクとが手本を見せる。
片方の手を握り合い、カクがの背中に手を置き、がカクの肩を持つ。
むしろカクがを抱きとめている姿勢。
とんでもない。
パウリーにとって、手を握り合うだけでも至難の技であるのに、女性を抱きかかえるなどもってのほか。
ダンスをする以前の問題であった。
「ウチと踊るのそんなにイヤか?」
「そ、そんなこと一言もいってねぇだろうが!!」
「じゃあ踊れ、腰抜け野郎」
「なァんだとてんめェ・・・・!!ってイタタタ!!」
パウリーの耳が思いっきり引っ張られた。
「よく伸びるなァ、パウリー。さすがっ」
「てっ、てめー離せ!!」
「さっさと踊ろ!せっかく誘われたんや。この機会にダンスの一つでもたしなみなさい」
「・・・・・・・・・・・クソォ」
大人しく練習するパウリー。
影で同僚や後輩たちにクスクスニヤニヤされているが、それに気づかないほど、
一生懸命覚えようとしないと、慣れない手足の動きを覚えることなんぞ無理な話であるのだった。
限界への挑戦
そう、まさにこれがパウリーにとってどれだけ大変であるか、やカク、ルッチにとってよく分かっていた。
「そろそろ日が暮れてきたのぅ?引き上げるか・・・」
「そうですねー」
「だらしないな、貴様。これくらいでへばるな」
「へ・・・へばって・・・なんかねー」
「ずっと踊りっぱなしやったもんなァ〜」
な、なんで俺がこんな目に・・・
明らかに普段の仕事のほうが疲れるだろう。しかし、こっちはこっちで精神的に辛いものがある。
パーティーなら何度か誘われたことはあるが、まさかダンスパーティーだとは・・・
でも、気のいい人だったんだよなァ。断るわけにも・・・・
「なぁ、一つ言っとくけど明日いきなり休むとかナシやで?」
「はぁ?あったりめぇだろうが・・・」
「どうだかのう?」
「今やっていた練習と状況も違う。社長に恥をかかせるなよ?」
「わかってらぁ!」
「明日ちゃんとフォローするからガンバロ?」
「まー今のステップでにまかして踊っていれば大丈夫そうだ」
「こけるなよ」
三人なりに激励の言葉を送る。
出来ればルッチかカクに行って欲しいなど、口が裂けても言えない。
そして、一生懸命俺に教えてくれたにも申し訳なく思う。
死ぬ気で頑張れば・・・・
明日一日。自分はどこかの貴族なんだと思い込むしかない。
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