〜 Trouble Maker 〜
いつもより晴れ晴れとはしていない、ここ、ウォーターセブン。
いつもの青い空を雲が遮っていた。でも 一番ドックは、やはりいつもどおり。
「おっしゃー!50人抜き!?」
は握ったこぶしを上げ、ガッツポーズに満面の笑み。
「なんつー怪力・・・・・・ルッチにも勝ちやがった・・・・・」
驚嘆しているパウリーと、
「まさか負けるとは思わなかったポッポー」
ちょっと落ち込み気味のルッチと、それを心配そうにみているハットリ。
すべては、カクのこの一言。
「もしかして、ガレーラカンパニー1力持ちかもしれんのぅ?」
ふとを見て、言い放った言葉。
「なに言ってんの、カクさん!!そんなわけないやん、ウチ、ただのか弱い女の子やでvv」
パウリーはが持っているモノを指差す。
「それを持っているヤツが吐くセリフじゃねーな・・・・・」
「クルッポー 同感だ・・・・・」
今からガレオンに艤装しないといけない装備品で一番重いであろう大型大砲
さすがの力自慢でも二人がかりでないと持つことも出来ないであろう大型大砲
「そんなに重いん?コレ」
そして、これを表情一つ変えずに持っている。
「が軽いって言うなら軽いんじゃろ」
「俺には持てねェがな・・・・・・」
「一回、腕相撲大会でもやってみないかのう?面白そうじゃぞ?」
「やる前から、言うのもなんだが・・・・・勝つ気がしねぇ」
「それにも同感だなポッポー」
「おもしろそうやなぁ〜?ハハン!ウチに勝ったらなんでもおごったんで?」
「「「「「「「よーし!やったろうじゃねぇか!!!」」」」」」」」
「って、みんな聞いてたんかぃ!!」
さすが、船大工さんたち。
みなさん単純です。
で、今に至るというわけで。
「よくもまぁ、疲れねぇな〜お前」
「パウリーじゃないけど、金がからむと、いつもの数倍の力発揮するから〜」
がおごる宣言をしたのだから、が買ったら逆におごらされることになるのは 必然的。
「俺はやらねーからな!お前にやる金はねェ!!!」
ギャンブラーである(でも弱い)パウリーは先に状況把握してから、勝負をしようとしていたが、
あまりにも魚人的な力を目の当たりにし、勝機が無いことを悟った。
そりゃあ、一番力が強ェだろうと思っていたコイツでさえ負けちまったんだぜ?
ほかの力自慢なやつも、のされちまったしよぉ〜
「ポッポー ・・・・・・根性なしだな」
「ハッ!なんとでもいいやがれ!!」
「根性ねぇなぁ〜?パウリー」
「ほっとけっ!」
「根性なし」
「根性なし」
「根性なし」
・・・・・・・・
「うるせー!!!」
「根性なし・・・・・じゃな?」
「カ、カクまで・・・・・・」
「根性なし〜!まさか逃げへんよなぁ?」
・・・・・・・・。
「クソッ!女にこんなこと言われて、男として黙ってられるか!!!!」
さすが船大工一の単純男。
上着を脱ぎ、出来る限り袖をまくるパウリー。
いきおいよくの前のイスに腰掛け、右腕を差し出す。
「こいや!!」
はパウリーの手を軽く握る。
「いいん?負け確実やで?パウリーはんっ」
「お前誰に向かって言ってんだ!俺ァ ウォータセブンじゃ、名の知れたギャブラーだぜ!賭け事なら任せとけ!!」
「「「「「「「 借金野郎が何を言う・・・・・ 」」」」」」」
みんなに言わせれば、パウリーは 「いい鴨」 である。
だが、パウリーは負けるわけにはいかなかった。
人一倍 プライド というものに関して、過剰に反応するのである。
特に、には負けちゃいけない気がしたんだよ。
なんとなく・・・・・・だがな。
「おっしゃあ!!絶対勝つぜっ!!!」
「〜ガンバ〜!!」
「さん頑張ってくださ〜い!!」
「嬢ちゃんならパウリーに余裕で勝てるぞ〜」
「姫〜ファイト〜!!!!」
「・・・・・・バカに気を使わなくていいからな?ポッポー」
さっき、コテンパンに負けた仲間は に対して大声援。拍手喝采。パウリーは無視。
「うん!ウチ頑張る!」
「・・・・・・・・・・・・・お前らなァ・・・・・」
二人の手を上からカクが手を被せる。
「準備はいいか?二人とも」
「オッケー!」
「おぅ!!」
「READY?・・・・・・・・・・GO!!!」
「おっらァ〜〜!!!!」
一気にケリをつけようと力の限り手の筋肉を固めるパウリーに対して、
「パウリー?」
笑顔の。
「声かけるな!真面目にしろっ!!」
どんなに力を込めて微動だにしないはそのままパウリーに話し続ける。
「パウリー、さっきから気になっててんけど・・・・・・・・」
チャック開いてるで?
「アハハっ!ごめんって言ってるやんかァ〜許してやァ〜?」
パウリーがうつ伏せになって寝ている食堂のソファーの横で は手を合わせ謝っている。
「・・・・・・・・・・・・・」
「さすが。バカを相手にするのがうまいポッポー」
ハットリは うんうん と腕(翼)を組み、頷いていた。
「じゃが、さすがに嘘はいかんな?」
「はァい。すみましぇん・・・・・・」
「それに引っかかる貴様はやはりバカだな ポッポー」
「・・・・・・・・・・・・・フンっ」
異常に気落ちしているパウリー。
そう。結果は即負け。
パウリーは自分から手の甲を机につけたのだった。
「くっそ〜・・・・・・・・」
「そんなに落ち込むなよ〜 しゃあないやん!」
「俺、金なんてね〜ぞ?」
ボコッ
「そっちで悔しかったんかぃ!!」
「いってぇな〜!なぐんな!怪力娘!」
「こっちはホンマに謝ってたのにぃ〜!!!」
「まァまァ、二人とも・・・・・・」
と、カクがその場をおさめようとした瞬間・・・・・・・・・・
ピカピカッ
見事に部屋を照らした光。
「? カミナリか?」
ルッチが窓に手をかけ、上にこじ開けた。
「と 雨だな・・・・・・・ポッポー」
時間差。大きな雷鳴がとどろいだ。
「うっへぇ〜!ひさしぶりのカミナリじゃねぇかァ?」
「大変じゃな。船にシートかけにいかんと・・・・・」
ルッチがそれに頷いた。そしてカクは異変に気付きキョロキョロ辺りを見回す。
「は?」
「やばいっ!早くいかな!」
もしガレオンにカミナリ落ちたら、燃えてまう!まだ塗料も塗ってないから、燃え尽きてまう!
こんなんやったら、早めに塗っとくべきやったっ〜!
大雨の中、びしょ濡れにも関わらず、走り続ける。
全速力で一番ドック倉庫へ。
「よかった!ゴム製シート!!」
巨大ガレオン用のゴムシートを倉庫から出し、ガリオン船に向う。
ガレオンは強風のため、ものすごく大きく揺れていた。はシートを持ったまま、船首から船尾まで飛ぶ。
パウリーから学んだロープワークが役に立った。濡れていても、しっかりと船に結び付けられる。
「あとは船の下に潜って、結びつけるだけっ・・・・・・」
ピカッ!!
また、容赦なくカミナリが鳴る。
飛び込もうとした瞬間、誰かがの手をつかんだ。
「、待つんじゃ!!」
「カクさんっ、離してって!はよせんと・・・・・」
パシン・・・・・・
カクはの頬を手の平で打った。軽くもなく強くもないほど。
「目を覚ますんじゃ・・・・・・・今飛び込んだらが感電してしまうじゃろ?」
頬を手のひらでなぞるは、カクの後ろに目をやる。
「俺らに任せとけって、。お前より長ェことこの仕事やってきてんだっ」
濡れていて火もついてない葉巻をくわえ、の肩を叩く。
「ポッポー 俺らが作ってる船だ 俺らがやるのは当たり前だろう」
赤いカッパ装備のハットリは言った。
「パウリー、ルッチ・・・・・・・・」
三人だけではなった。またその後ろにも 同僚・・・・・ いや、たのもしい仲間がいた。
「うんっ、ごめん!みんな!!」
「じゃあ、取り掛かるぞ!?てめェら!!!」
「オーっ!!」
雨の日の大工はいつもよりもはるかに忙しかった。
やっとのことで、巨大ガレオンは真っ黒のゴムで覆われた。
「よかったァ・・・・・・・せっかくのウチの初大型船マグロ号が無事で・・・・・・!!」
まだ止みあがらぬ雨の中、大きな水溜りの上に、は大きく寝転がった。
「アホっ!勝手に名前つけんじゃねェ!!」
「パウリー・・・・」
「ったく!!焦らすなっつーの!ビビったぜ!こんな嵐の中飛び出しやがってっ」
「クルッポー まったくだ」
はムクッと身体を起こし、首をたれた。
「ごめんなさいっ」
「ホント、心配させおって。いつも、いつも、いつも、いつも・・・・・・・・」
「うぅ、すみませんです・・・・・・・」
「じゃが・・・・・・・・」
カクは笑顔でに手を差し出した。
「見事な手際じゃったぞ」
「カクさんっ・・・・」
ゴロゴロゴロゴロ・・・・・・・・・・・!!!!!
「きゃあ〜!!!!!!!」
雷鳴よりも大きいのではないか、というほどのの大声がこだまする。
「な、なんだ!?」
「ウチ、ホンマはカミナリ無理やねん!!」
はカクの足に思いっきりしがみついて、震えていた。
「ポッポー・・・・・そんなに怖いのに飛び出していったのか?」
「そんなん考えてなかった!忘れてた!!」
「なんだそりゃっ!!」
「じゃあ、早く帰ろう。な?」
「ワッ!!」
カクはの身体をヒョイッと持ち上げた。
「カクさん・・・・・・・ごめん」
「なんじゃ?もう許してあげたつもりなんじゃが・・・・?」
「・・・・・・・・・・・・腰が抜けて、立てません」
凄まじい暴風雨の中、四人は家へ向かう。
「まったく・・・・はスゲェのか、スゲくないのかわかんねェぜ・・・・・・」
呆れるパウリー。
「はい、すみません」
「ポッポーまァ、可愛いじゃないか」
慰めるルッチ&ハットリ。
「うぅ・・・・・こんなんで、そんなこと言われても嬉しくない」
「わしはもう、笑い転げて死にそうじゃ・・・・・っぷ!アハハっ!」
爆笑中、カクさん。
「笑わんといてって言う方が間違ってるよな・・・・もうウチ、イヤやァ〜情けない〜」
歩くことができない状態のはオンブしてもらって帰った。
恥ずかしさと、申し訳なさで わんわん泣きながら。
「もう無鉄砲行為はつつしもう・・・・・・」
そう心に決めただった。
END