My secret
がガレーラカンパニーに入社してから一週間がたち、やっとこの造船工場で仕事をすることに慣れいった。
今、行われている大きな仕事は、海軍本部に頼まれた特大ガレオンを作ること。
住んでいた村では見ることも無かった大きな船が、今では自分がその仕事に携わっていることにはとても緊張していた。
・・・・・・・・・・いや、ワクワクしていた。
「やっと、ガリオン船!って感じになってきたなァ〜」
ホンマに感動するわ・・・男のロマン!てな感じやわ。女やけど。
この船に乗って、たくさんの人が航海する。冒険する。考えるだけで、胸がはずむ。ドキドキする。
昼だというのに、太陽の直下だというのに、なんて気持ちいい涼風。
船首に座るのが一番好きな。
「で、なんで俺の下っ端に来んだよ」
床に座り込み、葉巻に火をつけるパウリー。
「日替わり制ってゆうとるやろ?ガキみたいに、もうブツクサ言うのやめぃ。パウリー?」
「アイスバーグさんもアイスバーグさんだぜっ。」
「早くウチがココに慣れるように、配慮してくれたんやもん!そのおかげでみんなと仲良しになれたし、
色んな分野の仕事出来てウチ嬉しいし!パウリーの下におったらめっちゃ勉強なるしなァ!」
「そっ、そっか?」
「ウチ苦手やったんよ、ロープワーク。ヒッチめっちゃ嫌いやったしっ」
ヒッチはものにロープを結びつけること。が一番苦手なのは器用さが要求されるロープの使用。
今まで色んな人に教えてきたんだろう、教え方はガサツながらもはすぐに上達していった。
「・・・・・・・・ワハハ!あったりメェだろ!?俺は艤装とマストに関しちゃプロフェッショナルだからなァ!有難く思えよ!」
ガコン
「ふげっ!」
パウリーの頭に金槌がクリーンヒット!
パウリーは腰掛けていた仕事イスから落ち、前のめりになった。
「ポッポー 調子に乗るな バカ」
ハットリが話す。もちろん殺ったのはロブ・ルッチ。
「ハハハ!さすがパウリー!いい音なるなぁ?私もやらして〜」
手を叩いて爆笑するは、後ろから長い腕にソレをふさがれる。
「ふぎゃっ!!!」
「コレ以上やったら、またパウリーが馬鹿になってしまうじゃろ?」
「カっ、カクさんっっ?!」
驚いたは思わずカクの腕を握る。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・つっ!!」
「あっ、ゴメンナサイ!ちょっと力入れてもうた!」
「・・・・・・・・ん。いや、いいんじゃ。ワシも力入れすぎたわい、すまんな?」
「えっ!いえいえ!!いいんです!!」
「どうした 二人とも ポッポー」
「ワハハ!の馬鹿力がスゲェんだろ?さっきもロープぶっちぎれたしよ!」
「そ、それはロープが古かったやし!」
カクは一度腕をジッと見つめる。
・・・・・・・・・・・・・。
「ワハハッ。パウリーなにを言ってるんじゃ。折れるわけないじゃろ?」
腕をグルグル回し、手のひらをグーパーグーパーしている。
「そ、そうやって!こんな非力な腕で、んな事できるワケないやん!」
「オイオイ、そんなムキになんなよ」
「お前がバカなこと言うからだポッポー バカ」
「ちょっと顔洗ってくるわvv後でまたロープワーク教えてな!パウリー!」
「だーかーらァー、俺だって仕事あるんだからなっ!」
「じゃ、俺が教える ポッポー」
「なんでそうなんだ!?」
「、顔色が悪そうじゃが?大丈夫か?」
「え?全然元気です!心配ナッシングですよ!」
が船首から下の工場の屋根に大きくジャンプしていった。
姿が見えなくなるまでに時間はかからなかった。
「人並みはずれてんな〜。あのジャンプ力と速さ。カエルか?アイツ」
「人並みはずれているのはお前の経済能力の無さだポッポー」
「いちいち嫌味ばっかいいやがって、俺の姑か、お前!?」
「・・・・・・ポッポー カク?どうした」
「・・・・・ん?なんでもないわい」
なんでもない。
と言ったカクの右腕は、服の下での手の型が赤く残っていた。
この握力の強さ、跳躍力、賞金首を倒した強さ・・・・・身体能力が異常に優れている。
「・・・・・・・・・・・・んむ。」
「やっちゃった。気をつけてたのに・・・・・」
やっぱり本当の事言うべきか、言わざるべきか。
本当のところ、あまり言いたくないケド。
屋根の上(もちろん人様の家の)。
は三角座りをして、考え込んでいた。
「はァ〜・・・・・・・・・・」
「うわァーん!ボクのォ、ボクの宝物がァ〜!」
は下から聞こえた泣き声に、立ち上がる。
「・・・・・・・・なんや?」
「アイツ帰ってこねェな。なんだよ、せっかく違う技教えてやろうと思ったのによ!」
縄を用意し、律儀にを待っているパウリーはイライラしていた。
「ルルさんに聞いたら、町のほうに飛んでいったらしいんじゃが」
「仕事中になんだよアイツぁ!あの無鉄砲娘!」
「やっぱりお前に教えてもらうのが嫌になったんだポッポー」
「なんだと、コラァ!」
「やめんか。もう仕事にかかれ、二人とも。なら大丈夫じゃ」
「カク兄ちゃん!!!!!」
少年が一人、一番ドックの柵をよじ登ってカクを呼んだ。
「ハハッ!カクっ!モテモテだな!」
異変に気付くカク。少年は青白い顔で涙を流している。
「様子が変じゃ!」
「どうしたんだ?ボウズ」
「パウリーさん!どうしよう!早く助けに来て!」
「ゆっくり話すんじゃ。何があった?」
「カク兄ちゃん・・・・・・ヒック・・・・・・・死んじゃったァ・・・・・」
「なんのハナシだ?ポッポー」
「姉ちゃんがァ・・・・・・・・・!!」
「「「 なに!? 」」」
ボクが裏水路で、カク兄ちゃんに作ってもらった船で遊んでたんだ。
でも、知らないうちにボク傷つけちゃってて、段々沈んでいっちゃった。
見てるしかなかったんだ、ボク泳げなくて・・・・・・
そしたら、姉ちゃんが来て、
「男がなに泣いてんねん?」
「船が沈んじゃった・・・・・・せっかくカク兄ちゃんが作ってくれたのにっ・・・・・・・ヒック」
「カクさんに?」
「ボク船大工になるって言ったら、作ってくれたんだ。いい船大工になるんじゃぞって!」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
私もそういや、ちっさい時におやっさんに作ってもらったなァ。
「・・・・・・・・姉ちゃん?」
「ちょっと、待っとき?探してきたるわ」
「ダメだよ!水路は色んな水流があって、入っちゃダメって母さん言ってた!溺れるよ!」
はツナギを半分まで下ろして、腰に巻きつける。
「溺れる?なに言うとんねん?ウチを誰やと思ってんの?」
「姉ちゃん!」
「じっとしててや。ちゃんと戻ってくるからっvv」
「アイツ バカか!?」
パウリーは少年をおぶって走る。
「わしもその意見には賛成じゃ」
「ウォーターセブンには稀に見ない程の水路があるポッポー 間違って速い水流にでも飲み込まれたら」
「ココ!」
足元にはの黒いブーツと、の大事にしている工具が付いているベルト。
「のじゃ。本当に飛び込んだようじゃ」
「クソッ・・・・・・・・バカ野郎がっ」
パウリーは上着を脱ぎ、長袖を手にかけていた。
「えっぐ・・・・・・・・姉ちゃん・・・・・・・・・!!ボクのせいで死んじゃった!!」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・」」」
ペシッ
「誰が死んだんじゃ、アホ」
「!?」
ずぶ濡れになって立っているの右手には少年の大事にしている船。
「姉ちゃん!!」
「ハハッ!なんやの?!抱きついたりしてっ!!」
「死んじゃったのかと思ったんだもんっ!」
「死ぬ?んなわけないやろ?」
「でも普通、30分も水から出て来なかったら死んだと思うゼ。普通な」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?
「って、なんでおるん皆!?」
「心配して見に来たんだポッポー 無事でよかった」
ルッチはに近づき頭を撫でる。
「ルッチ・・・・・・・・ごめん」
「やっぱりタダモンじゃなーよな、お前・・・・・」
「ん?え?なに言ってんの!?女の子やって!見たまんまのかっわいい女の子!」
な?カクさんも ただの可愛い女の子やって言ったって!」
「パウリー。はただの可愛い女の子じゃ」
「なっ?!ホラ、パウリー!!ウチはただの人・・・・・・・・・・」
「魚人のな?」
!?
「なっ、なに言ってんの?カクさん!ホラ水掻きなんか付いてないし!」
「そうじゃな。じゃが、首からエラが見えとるぞ?」
あ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・本当かよ」
「クルッポー どうやら、の焦りようからして本当のようだな」
「魚人なの?姉ちゃん!!カッコいいなァ!!」
「黙っててごめんなさい・・・・・」
「これで説明がつくのぅ。人並みはずれた身体能力のわけ」
「なんで黙ってたんだポッポー 」
「多分皆で飲んだときじゃろ・・・・・」
今までに来たお客さんの話で盛り上がってたときに言った、
そう。あのパウリーの発言。
「そういや、魚人だって船買いに来るんだぜ、ココにわなァ!!」
ガツンと作業台にビールを置き、葉巻をくわえ返す。
「へっ、へえ・・・・・・・・・?」
「アハハハハ!聞きェか?聞きてェよなァ!」
「いんや、別にあんまり聞きたくないわ・・・」
「でよォ、見た目どおり根性悪そうなやつらでよ?いろいろ暴れ回ってくれたんだわ!」
「聞いとらんし・・・・・・」
「ワハハっ酔ったら話しが止まらなくなるんじゃ、パウリーは」
「ハハッ、そうなんすか・・・・・」
「一生許さねェ!アイツらココをめちゃくちゃにしやがってっ!なんだアイツら自分達が一番偉いだって?人間は下等だって?
なにがだよ!テメェら全員、力があるだけのタダの魚じゃねェか!!」
「ポッポー 少し酔いすぎだぞ?お前」
「ん?。どうかしたか?」
「なんでもないって!さっさ、飲も飲もー」
酔いに任せて、そん時本当の事言うつもりやったけど、言うに言われへんくなってさァ。
「ハハッ!ごめん、騙してて!・・・・・・・・ホンマごめん」
「帰るぞ・・・・・・・」
パウリーは上着を拾う。
「パウリー・・・・・」
「いややってん」
パウリーは立ち止まる。
「嫌われんの、いややってん。みんながスキやからァ・・・・・・」
「姉ちゃん・・・・・・」
パサッ
「これ着てろ。風邪引いちまうだろう?」
パウリーは自分の上着をの頭に置いた。
「パウリー・・・・・・!?」
「誰がお前みたいなヤツ、嫌いになんだよ、バカ娘」
「俺ァ、力を鼻にかける魚人は嫌ェだ。だが、一生懸命仕事して、ボウズのために船をとってきてやるバカな魚人は嫌いじゃねェ」
「めずらしく素直になっているポッポー」
「のおかげじゃろ?」
「クルッポー そうだな」
二人は笑う。
「「 ! 」」
はパウリーにピョンっと抱きつく。
「ななな、なにすんだ!離れろ!!ハレンチ娘!」
「やっぱりみんな、大好きやー!」
「姉ちゃん!ありがとう!!」
「あァ、また壊れたらちゃんとウチんとこもってきいや?直したるし」
「うん!」
「名前は、なんちゅうんや?」
「テッド!!」
「テッドか。エエ名前や。ヨシッ!船大工になったら、弟子にしたろう!」
「本当!?」
目をキラキラさせているテッドにはニッと微笑んだ。
「ファンとられてんぞ?カク」
「なら仕方ないじゃろ?」
「クルッポーそれじゃあ、そろそろ帰るか 工場に」
「ホレ、来い。そろそろ帰るんじゃ」
「は〜い!!」
心地いいかもしれない。
このウチの新しい居場所はすごくすごく優しかった。
★★★
帰り道。
「ポッポー 一つ聞いていいか?」
「ん?何?ルッチ」
「は、なんの種類だ ポッポー」
「種類?ハハッ、なんやと思う?」
「まさか、ノコギリサメじゃねーよなァ?」
ゴン
「アホか!もっと可愛いわ!」
「いてェな!その腕力でなぐんな!・・・・・ってよく今まで俺生きてたな・・・・・・」
そりゃ、トンカチでも死なないんだしね。
「トビウオじゃろ?トビウオ」
「うっわー正解。すごいな、カクさん!」
「言われてみれば、そのままだなっ。アハハハ!」
「あの飛脚力なら納得できるポッポー」
「あとで、みんなに言わなアカンなぁ。ウチが魚人やって・・・・・」
の肩に手を置いてルッチは言う。
「俺達が一緒にいるポッポー。みんなはコイツみたいに頭は固くない」
「・・・・・・・・・・そうだな」
「ワハハッ。何じゃ、めずらしく同意して。」
「ホンマや、パウリー。どうしたん?」
「・・・・・・・・・・反省中だよ、いろいろと」
「ハハハっ、変なパウリー!」
「ほっとけっ!」
もう日も暮れかけて夕方近く、一番ドック到着。
「ん、アレ?カリファさんとアイスバーグさんがいる」
「「「ヤバイ」」」
カリファの眉間にはシワ。アイスアーグさんはあの濃い顔で腕を組んでいる。見るからに怒っている。
「作業しないで、どこにいってたんですか!!」
「ンマー!!四人でデートしてたな!なんで俺を呼ばないんだ!!」
怒ってる意味間違ってます、アイスバーグさん。
その後、四人は仲良く 二人(特にカリファに)にこっぴどく叱られましたとさ。
おしまい、おしまい。
END?