〜Fighting☆Girl〜









造船会社 ガレーラカンパニーは一応八時出勤ということになっている。






一番ドックの門の前で三人は無言で立ち止まる。

「絶対、時間通り来やがらねェ。アイツ」

ポケットからGalleyのロゴが入ったライターを出し、葉巻に火をつけながら、パウリーは言った。

「アイスバーグさんの事じゃ。ワシらがちゃんと説明したら分かってもらえるじゃろ」

カクは軽々と大きな工具箱を左手に持ち、右手で年期の入った大鋸を持っていた。

「しかし、一応起こしに行ったほうがいいんじゃないか?ポッポー」

ハットリは羽をばたつかる。

ルッチは片手で口を塞ぎ フワッ とアクビをした。もちろん腹話術をしながら。




一応先輩として、新入社員にアレだけ飲ませたのは悪かったかな、と三人は後悔していた。

本当のところ、は好きで飲んでいたのだが・・・・・・・




「・・・・・・・俺はいかねェからな」

「なんじゃ?恥ずかしいのか?」

「なにがだよ!!めんどくセェだけだ、俺ァな!ハットリにでも行かせろよっ!!」



ズキーン



「いってェっ!頭カチ割れる・・・・・」

「クルッポー 二日酔いか?なさけないな」

「うるへーな」

パウリーは頭を片手で抑えながら、そうとうな重量であるだろう一番ドックの門を押した。

鈍い音にうなりながら、パウリーは難なく押し開けた。








「新しくお世話になります、と申します!

この度は一番ドックで一緒に働かせてもらうとゆうことで、先輩方の足手まといにならんように一生懸命頑張ります!

宜しくお願いします!」





「知ってるぜ!昨日騒がしかった嬢ちゃんだな!?」

「可愛い子じゃないかァ〜!」

「おーよろしくなー!」

「困ったことがあったら、なんでも聞いて良いからなー?」

「ホンマー?アリガトウございますー!!」

「仕事場に花が咲いたって感じだなー!?」

「花やなんてっ!口うまいですねー!!ハハハっ」









「「「・・・・・・?」」」

「遅いなァ、先輩方!もう五分も過ぎてるでー?」

固まっている三人に気付いて声を張り上げた。

「なんでお前ェ、いるんだよ・・・・・」

「なんや?オッサン、二日酔いかいなー?ホンマオッサンやなァー」

「うるせェ!オッサンオッサン言うなっていってんだろ!?・・・・・・・・・・っつー・・・イテテっ」

痛くて思わずうずくまるパウリーの肩に、パタパタとハットリが止まった。

は大丈夫なのか?このバカより相当飲んでたはずよな?ポッポー」

ルッチは無表情ながらも、心配そうな目で言った。

「大丈夫や。鍛えてあるからな!?」

と、二の腕をパンパン叩いた。





「カクと一緒に飲めるなんてなァ?ってばスゲーぜ!」

「やっろ〜?年下やけどナめてたあかんで!?」

「今度一緒にのもーぜ!?ちゃん!」

「てゆうか、いっそ歓迎パーティでもするか!?」









ゆうに100人以上であろう職人 ほとんど、体格がの何倍もある猛者たち中で、堂々と話しているを 目を細めて見るパウリー。

「違う意味でスゴイと思うぜ。もうなじんでやがる・・・・・・」

は明るい子じゃから、スグにみんなと打ち解けるとは思うとったが・・・もうアイドルじゃな?」

帽子をかぶり直しながらカクは、楽しそうに話すを見て笑った。

「いやじゃなァ、もうがみんなに捕られてしまったわい」

「カク・・・・・孫を捕られたみたいに言うな。じいさん臭ェぞ、オイ」

「アハハっ。せめて妹ぐらいにせんか?パウリー」

「その口調なんとかしたら、訂正してやるよっ」













「カクさん。ちゃんはドコかしら?」

カリファが社員管理帳と書かれた本を開きながら、コツコツ歩いてきた。

「あそこじゃ。あそこで皆に挨拶しておるわい」

「本当だわ。もう溶け込んでいるわね。安心したわ」

になんか用なのか?ポッポー」

「ええ。ちゃんと仕事の事、役職の事を話していなかったもので」





「あっ、カリファさんvvおはようございます!」

カリファに気付き、は駆け寄ってきた。

「おはよう、。あなたの仕事について色々お話しないといけないんだけど・・・」



「じゃあ、。わしら先に行ってるぞ?」

「はい!また後で!」










「アイツどいつの下でやんだろうなァ?」

手を頭の後ろで組んで、材木置き場の木に横たわる。パウリーは空を見ながら言った。

「わしの所に来ないじゃろうか?」

樽に腰かけ腕を組み、真剣に考えているカク。

「カク 相当気に入っているな ポッポー」

「お前もじゃろ?ルッチ。の前ではよく喋りおる」

ワッハハと笑うカクに、ルッチとハットリは無言になる。

「ルッチ、ロリコンだったのかよ!!おーこわァーいっvv」

「・・・・・・・そう言うお前は、女苦手じゃなかったか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・」





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!





「オイ 聞こえたか?」

「あァ、聞こえた ポッポー」

「まったく・・・・・・せっかくの初仕事の日じゃのに。」

「行くか?」

「あぁ」

「よっこらしょ」

















「なんや、いきなり銃ぶっ放して・・・・」

耳を指で塞いでいるは目の前の、男たちを睨んだ。

「なんだァ?この可愛いお嬢ちゃんはァ!」

男はに近づき、の顎をクイっと上げる。

「新入りや。朝っぱらから、ココになんの用やねん?みんなの仕事の邪魔やで?しかもアホみたいに銃うつな、アホ」

「威勢のいいお嬢ちゃんだなァ?ヒヒヒヒヒヒっ!俺ァ客だ!!」

「お客さんかいなァ。カリファさん帰ってもうたしなァ?ウチ、どうしよう・・・・・・・」



ガシッ



の顔くらいのコブシが男の腕を掴む。

筋肉質の巨体に勇ましい白ヒゲ、左肩には『船』の刺青。

「タイルストンさん!!」

「イテテテテテっ・・・・・・・・ってあァ!?なにすんだ!!お前」

「お客さん、御用はなんでしょう?こちとら忙しいんでね。さっさと用件を話して下せい」

タイルストンが静かに言う。



「オレたちゃあ、言わずと知れた海賊 シーザー海賊団!!

そして俺は1900万ベリーの賞金のかかっている男 船長のファイズだ!」


白い毛皮に気取ったスーツ、金色の短髪に、口にピアスをした男はそう名乗った。





「いやいや、そんなん聞いてないから。船修理したいちゃうんか?」

「船の修理?違う違う!!そんなちゃっちい事しねェよ 俺ァよ!!ヒヒヒっ!!」

の眉毛がその言葉に反応する。

「じゃあ、なんですかい。お客さん」

タイルストンが睨んだ。その覇気にたじろいだファイズは一歩下がる。

「ふ、船が欲しいんだよ!!金ならあるぜ!!たんまりとなァ!?」

「ほう。それならアイスバーグさんに言ってもらえるか。・・・・・・・・おい 、どうした」





「なァ、お客さん。その今まで航海してきたあんたらの船、ぶっ壊れでもしたん?」





「あァ?まだぴっかぴかだぜ!?一年前に買い換えたやつだからよォ!!」

「うちの船長はなァ?新しいもん好きなんだよ!」

そう言ったクルーをは目で抑えた。

「あんたには聞いてない。黙れ」

「なにを!?コイツ!!さっきから調子こきやがって!!」

「まァ、いいじゃねーか。俺たちは船を買いに来たんだ。ココの造船会社が世界一なんだろ?カッコいい船頼むぜ?」

「いいんか、そんなに簡単に船捨てて」

「気に入ったら三年くらい使ってやるよ!ヒヒヒヒヒッ!!」

「船に未練なんてなさそうやなァ?」

「未練・・・・・・?聞いたか オイ野郎共!!」

後ろに控えているファイズの手下達が大きく嘲った。

「何言ってんだ!船なんてただの自己主張の道具じゃねェかァ?ずっと古臭ェ船なんかにのってられっかよ!」










「売らん」









「・・・・・・・・・・・は?」

「アンタらに船をやるか、アホ金髪」

「っは!お前みたいなガキの一存で決まっちまうのか!?自由な会社だなぁ?オイ!」



カチッ



ファイズの銃の銃口がの鼻の前に来る。

傍にいたタイルストン、そのほかの海賊たちを睨んでいた職人たちもピクッと動き出す。

「先輩がた、手を出さないで下さい。一人で十分なんで」

「チッ・・・・いい加減にしろよ。ガキはお家でねんねしてなァ。社長出せ、社長をヨォ!じゃないとコイツの命が・・・」

「だから、帰れ。趣味悪い兄ちゃん!」








パァーンッ








影。




「・・・・・・・・・・・なにっ!?」

ファイズの銃を持った手は高く持ち上げられた。

「まったく、。ちょっとぐらい逃げてくれんか?ワシを心配し・・・・・・・っては?」

タイルストンが上を指さす。

「コっコでーす!!」




「フゲッ!!!!」

そしては着地した。上を向いたファイズの顔の上に。




ファイズの上に乗っているは、カクに対して敬礼した。

「カクさん、アリガトウございました!」

、ワシが助けんでも良かったんじゃないか?」

「ヘヘッvvそんなことないですよ?」





「お前らァ、船長に何しやがる!!」


「こいつらもおったんや、そう言えば。すいません、手をわずらわせて・・・しかも勝手にお客さんに・・・・」

「ええんじゃ、俺らもと同じ気持ちじゃ。で、こやつらはお客さんじゃない。ただの海賊じゃ」



「ポッポー こんな奴にアイスバーグさんが船を売るわけがないしな」

「あァ、絶対『いやだ!!』って言うぜ?」



の両サイドから二人が歩いていく。



「パウリー、ルッチ!!」

「どっちが どれだけやれるか勝負だ ルッチ!」

「いいだろう。これだけ門の前にいられては見物しに来る町の人に迷惑だからな ポッポー」

そう言った(?)ハットリはの肩まで飛んできた。

「じゃあ、いっちょやっちまうか!!」

「・・・・・・・・・・・・あぁ」



「えっ、ウチが!!!」







カクがの肩に手をおいて、止まらせた。

「まかせるんじゃ、二人に」




「え・・・・でもウチが撒いた種やし、自分の事は自分で片付けんと・・・・・・」

「まァ、待て。あの二人にもいいトコ見せさせてあげても いいんじゃないか?」

「?」




ワシばっかり良いところ見せたら、後で何言われるか分かったもんじゃない。




「カクさん、タイルストンさん。心配させてゴメンなさい」

「いいや!いいもん見せてもらった。気に入ったぜっ」

ポンポンと大きな手をの頭に乗せる。


「じゃが、もう無茶はやめてくれ・・・・心臓がいくつあっても足りんわいっ」

「カクさん。でも二人じゃ・・・・・ってうわっ!!」







人の山積みいっちょアガリ?








「二人じゃ・・・・・なんだって?」

手をパンパンはたきながら、パウリーはロープ片手に葉巻を手に取る。口には笑み。

ハットリがルッチの肩に戻っていった。

「いくらだ?」

「クルッポー 俺は27人」

「・・・・・・・・くっそ。ドローかよ」





「やばい、やばい。二人とも強すぎや・・・・・しかもあっと言う間に・・・・・」

「じゃろ?」




「見たか!俺のロープアクション!!」

パウリーは、高々とロープを握った手を上げる。




「あーゴメン。見てなかった」

アハハと笑ってごまかすに、パウリーはため息をつく。

「お前なあ、海賊に迂闊に手を出すんじゃねーぞ?本当にオンナかよ。肝座り過ぎだぜ・・・」

「ふふん!だからウチは男になるってゆったやんvv」

「・・・・・・・・・・・・・・・あのなァ」

「お前の負けだポッポー」






、あっち見てみい」

カクが指差す方向に目をやったは、目を丸くした。







大きな笑いと共に、それ以上の歓声が起きている。

柵の外には見物に来た観光客や、町の人が大勢自分の事を見ている。


『誰だあの子、見たことあるか!?』

『いいや、見たことねー!!新しい子じゃないか!?』

『可愛いわねェvvあの子』

『でも強いぞ!』

『跳躍力はカクさん並じゃねーのか!?』

『名前なんてーゆうんだろうねぇ?』







「一気に人気者じゃな?」

「なんだ?顔が真っ赤だぜ?

「照れているのか?ポッポー」

「・・・・・・・・・・・・・だってこういうの苦手やし」

うつむくに見入っていると、後ろから声がした。






「ンマー!なんかあったのか?・・・・・って見りゃあ分かるが」

「アイスバーグさん!」

「カリファ。早急に海軍に知らせてくれ」

「はい、もうすでに手配しております」

「ンマー!さすがだな!!」





「ごめんなさい。こんなオオゴトにしてもうて・・・・」

「アイスバーグさん、は悪くないんじゃ」

「そうだぜ、こいつらが悪いんですよ」

は悪くないポッポー」

「そうですよ、アイスバーグの旦那」






「ンマー!誰がを悪く言ったんだ?」

「へ?」

!1900万はお前のブンだ。何でも買ってこい!」

「は?」

さんがこの海賊を倒したんでしょう?」

「・・・・・・ま、まァそうなんですが」


「いらなかったら俺にくれ!!」


ルッチはパウリーの耳を引っ張った。

「お前は黙ってろポッポー」

「イテテっ・・・・・・・・」







じゃあ、その1900万ベリーでみんなにビールおごります。







「・・・・・・・・・・・・・いいのか!?ソレで!!」

「コイツの借金返済に使うよりは100倍マシだポッポー」

「それはそうじゃが・・・・・・」





「いいねん!迷惑かけた御礼や!てか、お金はパーって使ってもうたほうが気持ちいいやんvv」






・・・・・・・・・






「アハハハハ!!」

カクが笑った。それに線が切れたかのように周りの人々も笑う。








その日についたの異名、『無鉄砲娘』 

「って、なんでやねん!!!」











夜、いつもなら真っ暗で静かなはずの一番ドックは、

明け方までずっと、にぎやかな声が聞こえていた。














NEXT?