「早くして〜」
「もうちょい」
「なんで女の私より長い間鏡の前にいるの〜」
ヒカルの足元にもたれかかって、 「もー」 とうな垂れてみる。
それに対し、全く動じずに返事をするヒカル。
「のパパに会うんだから、ちゃんとしないといけないデショ」
「それが正装?ワックス使いすぎだから・・・だからスグなくなるんだよ」
最後に持った髪の毛を、キレイにねじる。
髪の毛の事なら女の私よりもこだわりが凄まじい。
「・・・・・ん。ヨシ」
その声と同時に、鏡の前から移動する。
ヒカルの足に全体重をかけていた私の身体は、ゴロっと床に転がった。
「痛・・・・。もう出れるの?」
「バッチシ」
30分前とあんまり変わってないよ とツッコミたい気持ちを抑え、彼に両手を出した。
「っていうか、本当に運転出来るんでしょうね?久しぶりじゃない?」
少し黙ったあと、ヒカルは手をさし出した。
「大事なを乗せてるんだから、安全運転するし。しかも借り物の車だし」
ヨイショ と私を軽く片手で引き上げる。
「佐伯さん・・・・・・・だっけ?」
「うん。多分傷つけたら、命とられる」
「だって、あんなカッコいい車だもんね。どうせなら、車買っちゃったら?」
「いいかもね」
新しい家族が増えるんだし。
そう言った瞬間、私はなぜか恥ずかしく感じてしまった。
最近まで実感がわかなかったせいか慣れていないせいか、最近はその手の言葉にドキッとさせられている。
「?行くぞ」
ヒカルは私の手を握り、玄関のドアを開けた。
今から彼女の親に会いに行くというのに、全然緊張してなさそうなトコロが男前。
やっぱり、「お父さん」になったら人が変わっちゃうの?
「あっ、やべ。カギ カギ」
でも、やっぱり頼りないか。
Going ours way
「君が天根クンか?」
じゃじゃーん 父登場。
御年51才、大事な大事な一人娘を愛する男。
いつもある眉間のしわが一層深くなっている・・・。おっかない。
そりゃ、あんな手紙いきなり送ったらねぇ?
「天根ヒカルと申します。宜しくお願いします」
結構礼儀正しいじゃないヒカル。合格点だわね。
「まァ〜カッコいい子じゃないの〜。ささっ中に入って、入ってっ」
それに続いて、母。
ヒカルは はお母さん似だな と小声で言って 私の母の顔を見、こっちに顔を向けた。
「顔が?」
「趣味が」
まぁ、顔の趣味は一緒ですけど。同じ俳優好きになったりするし。
「性格はパパに似てるって言われるけど?」
「じゃあ、お父さんの事好きになるかも」
「ハハッ まァ、頑張ってよ。多分、ヒカルが考えているより簡単じゃないし」
「愛があれば、なんとか」
「言っとけ〜」
懐かしい茶の間。未だに恥ずかしい写真がたくさんある・・・。
「可愛いじゃん」
「頼みますから、あんまり見ないで欲しいのですが・・・」
「持って帰ろうかな」
「ベタベタ触るな。誰が触っていいと言った」
あ、もうすでにお父上はキレぎみ。
「いいじゃない、お父さんっ。娘が可愛い証拠じゃない?ね?」
ナイスカバー ママ!!
「ね?このとか可愛いでしょ?」
「ゲッ!!!!」
小学校の運動会のこっぱずかしい写真じゃん!
「なんで、まだあるわけソレ!?」
「はい、可愛いですね。・・・・・・・・・今もだけど?」
「バカっ!もう、いいからさっさと座ってって!!」
で、ヒカルと一緒に両親の前に座った。
まるで、何かのドラマのようだ。
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
座らなきゃ良かった。一気に重い雰囲気になっちゃったよ。
お父さーん。目ェつむってないで、なんか喋って〜。
お母さーん。落ち着いて、お茶すすらないで〜。
ヒカルくーん。頼むから一発目ダジャレはやめてね〜。
で 結局私が喋るんですか。
「でっ!この人が 私のダンナになる人です」
「ども」
「ねェ、どっちがプロポーズしたの!?」
お母さんがすぐさま口を開いた。
「俺です」
「よかったわっ!もうお母さん嬉しくて!!にこんなカッコいいフィアンセができるなんて!!」
「お母さん 大げさ。ヒカルはお母さんが思ってるほど男前じゃないよ。子供だし」
「 ひどい・・・・」
「「「「・・・・・・・・・・・・・・」」」」
で、また沈黙。沈黙。沈黙。
「お父さーん?」
父はまだ目を瞑ったまま、大きくため息をついた。
「お前が今流行りの できちゃった婚 をするとは夢にも思わなかったぞ」
「う・・・・・」
お父さんは昔ながらの堅物な人で、やっぱりそういう類は好かないらしい。
大体は予想していたけれど。
「天根くん」
「はい」
ヒカルはお父さんの顔をじっと見詰めた。
「こどもが出来たから仕方なく結婚。まァ、それは許そう」
「何言ってるの お父さんっ」
いちいち腹が立つ言い方。それをお母さんが諫めた。
うん、でもやっぱり一番腹が立っているのはお父さんなのかもしれない。
大げさじゃない。自意識過剰でもない。お父さんは私が一番好きだから。
閉じていた目を開けたお父さんの顔。
昔一度だけ本気で私を怒った顔と全く同じ顔だった。
近所の小さい子供が見たら泣いて逃げ出してしまうような。
「だが娘をやるにふさわしい男なのか 君は」
それでも、まだヒカルは目をそらさない。しかもいつもの漂々とした顔で。
「そのような男には到底思えないな」
「・・・・・・・あなたっ」
「そこらへんでうろついているチャラチャラした若者となんら代わり映えしない」
「失礼ですよっ」
「お前は黙っていなさい。・・・・・・・天根くん」
はい。と目を合わせたまま、大きく言った。
「命に代えても を幸せにしてくれるか」
お父さんは私に一度目を合わせ、そしてまたヒカルにソレを向ける。
ななななんか、恥ずかしいんですけど・・・・・
ヒカル・・・・・・・なんて答えるんだろう?
てなことを考えていたら、耳を疑った。
「いやです」
ドテッ
私は吉本新○劇の芸人にも負けず劣らずの勢いでこけた。
「は!?なにヒカル!!!!そこで冗談いうわけ!?!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
お父さんは言葉なくして、呆れてんじゃん!!
「いや、冗談で言ったつもりないし」
「えっ!幸せにしてくれんじゃないの!?」
今まで言ってきたヒカルに対しての どのツッコミよりも切実。
「誤解すんなよ。幸せにはする。でも命がけってさ、俺いなくなったら悲しいじゃん。
でも俺、より先に死ぬよ。俺が生きているうちにが死んじゃうなんてやだし。
俺が結婚したいって言ったのは、といれば 『俺が』 幸せだからだよ。」
いつも つまんないダジャレをかましているけど、
結構無口なヒカルが ここぞと続けざまにそう言ったから、しばらく私は呆然とヒカルを見た。
「・・・・・・・・・・・ジコチュー 自己中 じこ虫すぎ」
溜息しかでない。なんでいちいちヒカルに惚れなきゃいけないんだよ。
「というわけです。のお父さん。結婚させてください」
お父さんは思ったとおり、立ち上がって自室に向かって歩き出した。
怒るよな、普通さ。だって、私もこんな自己中心的な男、他に知らないもん。
「あーあ、怒っちゃった」
「え。なんで?」
「ヒカルってさ、幸せに生きてきた!!!って感じの人間だね」
「うん幸せに生きてる人間だよ」
帰ったら、めちゃくちゃ可愛がってあげようか。
なんか物凄い愛しいよ、ヒカルが。
「・・・・・・・・・・・・・・・・ふふっvvv」
お母さんがいきなり噴出した。
「な、なにっお母さん!何笑いなの!?」
「ふふっ!お母さん、ヒカルくんに惚れちゃったわァ〜」
「え」
「お母さん、なにいってるのよ もう。お父さん怒っちゃうし。私たちどうすりゃいいのよー」
「怒ってないわよ?」
この言葉に私たちは顔を見合わせた。
「え?ホント?」
「本当よ。今頃書斎で顔真っ赤にしてるわよっvv」
「え?なんで?」
「お父さんと同じ事言っちゃったのよ ヒカルくん」
「えっ・・・・・・・・・・・・・・・・えェェ〜!!!!!」
「ホント、懐かしいわァ〜vv照れちゃうじゃないっ」
お母さんは、笑いがとまらなくなっているらしい。
「ネタがかぶった・・・・・・・・・」
「・・・・・・・うん まァそれはそれで、良かったのよ」
まったく・・・・・・・
女の子はお父さん似の男の人を好きになるなんて、よく言ったものだ。
「」
帰りの車の中、安全運転といいながら片手でハンドルを握るヒカルは言った。
「は〜い なんでしょうか 閣下」
ヒカルは使ってない方の手で、ネクタイを緩めた。
「会ってほしい人がいんだけど」
「え?ヒカルの両親には会ったわよね」
「俺の親友」
「あ〜いつも話してくれてる人?」
私たちの会話によく出てくる幼馴染の・・・・・
「そ」
「私も会いたかったのよっ!ヒカルの相方さんvv」
「ある意味、のお父さんより強敵」
「え〜、気にいってもらえるかしら・・・・?」
そう言うと、ヒカルの片手が私の頭に伸びてきた。
前を向いているのに、まっすぐ私のほうに。
「気に入るよ 絶対。こんなに可愛いのにさ」
そして、ポンポン頭を軽く叩かれた。
「ただ 俺にはもったいないって言われそうで」
「・・・・・・・・・・・・」
「何?」
「確かにそうよね」
「オイオイ」
私はお腹にそっと手をあてる。
あなたのお父さんはなんでこんなにカッコいいんでしょうかねー?
早くあなたの顔が見たいな。でも 頼むから、ヒカルのダジャレ癖だけは似ないでね?
「何笑ってるの、」
「ないしょ。ほらっ前向いてっ!」
「・・・・・・・・・・うぃ」
なにわともわれ、すんなり結婚できそうで良かったわ。
今はただ、式場をどこにするかとウェディングドレス選びに悩むだけね?
end
アトガキ
なんか時間がこんがらがる・・・・・
現在五月中旬。でプロポーズしたのが五月初旬。ジューンブライドだから結婚式は六月で(え)
赤ちゃん生まれるのは五月時点で三ヶ月だから12月くらい?冬だから大丈夫だよな合ってるよな。ドキドキ・・・・
間違っててもスルーしてやってください・・・・・(笑)
ってか、キャラが・・・・・・!!