あァ、ボクはとりかえしのつかないことをした。

おじいさんがあれほどボクを愛してくれたのに。

あれほどボクを大事に育ててくれたのに。


ボクはとりかえしのつかないことをしてしまった。

なんてバカだったんだろう。もう戻る場所なんてない。


帰りたい  

帰りたい。ボクの家に。


















When you wish upon a star


















「ウソですよね・・・・?いつもの冗談だって言ってください・・・」

こんな顔をしながら離すときのカクは、決して冗談など言わないことをは分かっていた。

でも、あまりにも受け止めるにはには大きい事であった。





“ワシは政府の人間じゃ”





「え?」

いつものように、カクの部屋に遊びに来た

突拍子にそう言われ、首をかしげるしかなかった。




明日はいよいよ“嘘”が終わる日。君にはすべてを話しておこう。




「明日、ある人間がアイスバーグさんを襲う」

「え?どーいう・・・・・・・」

「アイスバーグさんは殺されるかもしれん」

「!?」






・・・・・・・さよならじゃ・・・・・・・」






すべての事を話した。

今まで君にウソをつき続けていたこと、ワシは後悔していない。

なにせ、これがワシの仕事じゃ。

勝手だとは思うが、偽りの日々だったなんて言いたくない。


任務


ワシは目的遂行のためにはなんだってする。

だが、君に向けた笑顔はけして偽りじゃない。

君に言った言葉も、君に抱いた感情も、嘘じゃない。



ただ一つついた嘘。一番深く君の心を傷つけてしまうのだろう。











「カク・・・・・さん・・・・・・?」

最後に見る君の顔。出来るなら見たくはなかった。これは嘘をついてきたワシに対しての罰なのだろう。

ハハ・・・・キツイのう・・・・



「言っただろう?サヨナラじゃ」




「離すんじゃ、

肩を掴まれている手に自分の手を置いた。

「いや・・・・・いやです!!!!」

は泣き叫ぶ。目は真っ赤に腫れ、涙がとめどなく溢れている。

ワシが言ったことを受け止めるにはまだ少し難があるようだ、

だが、ワシがどこか遠くへ行ってしまうという事だけはは理解したらしかった。


「ウソですよね・・・・?いつもの冗談だって言ってください・・・」

「嘘じゃないさ。本当じゃ」






「い、行っちゃだめ・・・・!!」

がそのままワシの肩に手を回し、胸の中に顔を押し付けた。

そして、束の間。

シズの手は緩む。

「あ・・・・・・・・・・アレ?」





「そろそろポヤーっとしてきたじゃろう、頭が。睡眠薬仕込んでおいたからのう?」

いつもが部屋に来ると一緒に飲んでいたミルクティーを指差す。

いつも、部屋に来てはが作ってくれていた。

でも、今日はワシが作ってやった。薬を入れるために。

ただの睡眠薬でも、素直に飲んで『おいしいです』と言ってくれた君の笑顔に、ワシの心は少々揺らいだ。

ワシのために紅茶の入れ方を練習してくれた

今までのお返しがこんな毒物ですまんかった。


「今までおいしいミルクティー作ってくれて、ありがとう」

「・・・んあ・・・・カク・・・・・さ・・・・・・」


まぶたを閉じていくと同時にカクから手は離れ、後ろに倒れかける。


「・・・・よっと」

それを抱いて受け止めるカク。






「すまんな、・・・・・」

今日の日のために取り寄せた薬。全く身体に害はない。二日間眠り続けるだけ。

辛いだろうが、君だけは巻き込みたくないから。







「愛してる・・・・・・・そしてさようならじゃ、

そして、その唇にキスを落とした。

触れるだけのキス。

『カクさんっ』

ワシはずっと、その太陽のような笑顔で高らかに自分の名前を呼んでくれたこの唇に、口付けをしたかった。





君がいつか話してくれた童話。

最後には人間の姿になって、元いた場所へ、一番会いたかった人の元へ。

「羨ましい話じゃな」

許されない。君は許してくれないだろう。

覚悟の上。ワシらは任務のためならなんだってする人間じゃ。








だが、君の寝顔に涙したことは唯一の真実。

『戻らない・・・じゃなくて戻れない』

君との日々が終わりを向かえ、最後に残った一つの真実。

そして、抱いてしまった願い。







「ワシのいない世界で、どうか幸せに」

そう言って、カクは月明かりを背にをもう一度抱きしめた。




















End





ずっと前に書いたモノ。
CP9のカクさんもオットコマエだなぁ・・・