ちょっと言いたいことがあったから、バネさんに電話してみた。


「あぁ、もしもし。バネさん?」

「おぉ、どした」

「久しぶりに俺と遊んでよ」


携帯電話の向こうでバネさんは、なんだよキモちわりぃな と笑っていた。

言っておきたいことがあるんだ。言っておかないといけないと思ったんだ。






Catch ball






「結婚おめでとう」

「あぁ」

東京にある会社に勤めているバネさんに合わせて、飲む場所も東京にした。

何回か来た事がある。一度目はバネさんが誘った。

そのとき、なんで誘ったのか想像がついた。だって、いつもならがいるのに今日は二人だったから。

「あんときは、ありがとうな」

「びっくりしたっすよ。バネさんがあんな弱気になるなんて」

「あぁいうのって、俺ニガテなんだよなぁ」

ちょっと照れ顔。そういうときに頭をかく癖、変わってない。




「プロポーズしようと思ってんだけど」




あのときバネさんは、消え入りそうな声で俺に言った。

俺は、は待ってますよ と返した。

なんてゆうか、あんなバネさん見たのは初めてで。

俺でいいのか?とひとりごとみたいに言った。


「バネさん以外にを幸せにできる男はいないっしょ」

「ははっ、そうだよな」

「自信過剰・・・・・」

「う、うるせーな!」





そんなバネさんを見て、いつものバネさんだと安心した反面、

ちょっと むかついた。






「甘ーいカクテルお願いします」

「俺はおまかせ」

ここのカクテル。

前に来たとき 浴びるほど飲んでしまったけれど、今日は控えめに 控えめに。

「ダビデ。なんか俺に用でもあったのか?」

「うん。用があったんだヨウ・・・・・・・っぷ」


ぎゅむ


「・・・・・・バネさん・・・いひゃい・・・・・」

つねられた。

「で、なんだよ」

 元気?」

「おぅ、頑張って いいおくさん 目指してるぜ」

「そう。よかった」

結婚式から、会うことが無くなった。

でも、大体想像がつく答えだったことに、妙に安堵した。

欲を言えば、エプロン姿が見たいけど。




「お前、今いい人いねーのか?」

驚くことを聞かれた。

「いない」

「俺が紹介してやろうか?」

「いいよ。まだ、ふっきれてないから」

「えっ、お前ふられでもしたのか?」

「うん。思いっきり」

「なんだよ。言えよな、そういうことは。水臭ェな」

カクテルグラスを俺に向け、怒っている。少し酔ってるみたい。

「そんな、すねなくても」


「お前にもみたいないいやつ 見つけてやりてェな」

「・・・・・・・・・・・・」

「ダビデなら、絶対いいやつ見つかると思うんだけどな」

「バネさん・・・・・・」





「よかったよ。俺の好きな人の夫がバネさんで」







これを言った後のバネさんは、すごく面白かった。

驚いてふきだして、なんで言わなかったと怒って、変に静かになって・・・・・・・・・・・・

「・・・・・・・すまん。知らなくて」

謝って。


「なんで、バネさんが謝るの。意味分かんないじゃん」



「あのとき・・・・プロポーズしようとした時、どんな気持ちであんなこと言ったんだよ、お前」

そんな悲しい顔しなくていいから。

「正直に言っただけ。俺はバネさんに嘘はつかない」





そう、嘘つくわけない。

バネさんが、俺に好きな人 聞かなかったから言わなかっただけ。

ただ、それだけ。





「鈍感すぎか?俺」

「鈍感だね。でも俺の演技もスゴイ」

「あれだけ、応援してて、なんだよそりゃあ」


俺はが笑って、バネさんが笑ってくれていたら良かったんだ。

これは本当に、本当だから。






だから、を幸せにしてね と バネさんも幸せになってね と言う意味を込めて、俺は言った。



「お幸せにね」

やっぱり二人とも、俺にとって大事なひとだから。



そのあと、バネさんは黙ったままだった。















駅のホーム、今は同じ駅じゃないから ここでお別れ。

「だいじょうぶかよ、バネさん」

「あぁ」

「ほんとに?家まで送っていこうか?」

「大丈夫だって。」

さっきの話を聞いて、俺とを会わせたくなくなったのだろうか。

まぁ、仕方ないけど。




電車が来た。もう深夜だから、人も少ない。

「寝過ごさないようにね」

バネさんは電車に乗り込んだ。

「あぁ」

「また、飲みに行こう」

「おう」





出発のベルがなった。

「じゃあな」

「バイバイ」

















月明かりもなく、電灯をたどって歩く。

ネクタイを緩めていても、なんだか苦しかった。

あきらめてた。とっくに。


だから、もういつもどおりでいいんだ。


の事は好きだった。

と胸をはって過去形にできてる。

だから・・・・・・・







胸でバイブがなった。

「・・・・・・・・・・バネさん?」











                                   いつでもいいから、家に遊びに来い。












ホント、鈍感なんだか 敏感なんだか。

まぁ、とりあえず のエプロン姿がおがめるってわけでちょっと嬉しかったり。

それ以上に、安心したり。





うん、見に行くよ。新婚家庭ってどんなのか見たいし。





久しぶりに会いに行くから、笑顔で向かえて。

最近はまってる有名ケーキ屋で買った たくさんのケーキを持って行くから。













END







・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
アトガキ
ダビ&バネ。ダビバネじゃない。笑
一つ間違ってたら、なっていたかもしれないですが。
これはダビがバネに暴露ったはなしです。
結婚した直後くらいの。
なんか、書きたくなったもので・・・汗