〜幼馴染〜
「今何巻目?」
「ん・・・・・・・六巻」
「読むの遅い〜・・・・」
「もうちっと待って」
黒羽家、春風の部屋。
二十冊あまりの漫画が散乱中。
「はーやーくー」
「なんだよ、見たんだろ?一回は」
「見たけどさ・・・・オモシロかったからもう一回見たいのよ」
本当は違うけど。バネちゃんと居たいからだけど。
「待てって。今イイとこなんだから」
お互い背中で支えあって座っている。
五巻目をパラパラ捲りながら、は少し後ろに体重をかける。
「まーだー?」
「まーだー」
「バネちゃん早く〜」
「うるせェな。いいとこなんだから・・・・」
天根に借りた某有名少年漫画雑誌に掲載されてる、今春風がはまっている漫画。
先にが借りて、家に持ってきた。
そして、渡しに来ただけじゃやはり物足りないので、ちゃっかり家にお邪魔中の春風の彼女 。
「ねぇ〜・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
相槌さえしてもらえなくなって、暇を持て余している。
「・・・・・バネちゃん」
「・・・・・・・・・・・・」
「好きだよー?」
「・・・・・・・・・・・・」
返事が返ってこない。
「・・・・・彼女が部屋に居るのに、どうやったらそんなに漫画に没頭できるわけ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・うん」
「聞いてないデショ」
「・・・・・・・・・・・・・・うん」
は思いっきり体重をかけ、一気に横にずれる。
「のわっ!?」
おそらく全体重をにかけていた春風の身体はよろめいた。
「ハハッ!びっくりしたー?」
「お前・・・・・・そういうことしていいと思ってるワケ?」
「えへっ」
やっとこっち向いてくれた。
「だって話聞いてくれないんだもん」
「俺にカマってほしいんなら、変な口実つけねェでそう言えよ」
「・・・・・・漫画見たかったのは本当だもんね」
頬を膨らませ、睨みつけられ、深く溜息をつく春風。
「背中預けてんのにイキナリそんなことすんなよ、もう」
「この態勢、もうヤダっ。バネちゃん隣で読んで?」
「読んでていいのかよ。カマってほしいんじゃないのか?」
「いいよ。一緒に読むからサ」
そしてベットにもたれかかり、座りなおす。
「ここまで読んだんだ・・・・・・」
「いいとこだろ?続き気になるから、もう読むぞ」
「ん」
十分後。
「バネちゃん・・・・・」
「なんだ?」
「壊滅的に読むの遅い」
「・・・・・・・・・・・・」
「眠くなってきたし・・・・・」
「おいおい。夕方なったらちゃんとけーれよ?」
「膝借りるね」
は自分の頭を春風の太ももに置く。
「・・・・・・・・お前なァ・・・・・・・」
「オヤスミなさーい」
が寝息を立てて眠っているころに、やっと六巻目を読み終える。
「コラ。お前が寝てると七巻探せねぇだろ・・・・・」
春風の文句はの耳には届かない。
「よく彼氏の部屋にいるのに、そんなに無防備でいられるな」
そう言って、オデコを指でつつく。
「・・・・・・・・・・・・・・・次部屋に来たら、覚悟しとけよな」
思わぬ問題発言をボソッと言った春風の言葉は、またには届かない。
後ろのベットから掛け布団をとって、にかけた。
「幼馴染って結構ムズカシイよなー」
少し肌寒くなってきた午後のこと、春風はそっと微笑んだ。
END