あぁ、あの時も桜が散ってた。
お前と出会った、あの日。
そう、お前が俺に喋りかけてきたときも。
そしてあの日も。
キャッチボール
「ほんとに、みんな家族みたいだよね」
俺の隣で俺の歩調に必死でついてくるやつ、 がいった。
「で、春風くんがお父さんで、虎次郎くんがママみたい」
「あいつが俺の奥さんとかごめんだ・・・」
でも、皆とは仲が良いからそう見られても、
・・・まんざらでもないか。ってオイオイ。
とは去年の春・入学式からの付き合い。
あいつ、今歩いてる桜並木の下でうろちょろしてて、なんとなく見てたら目が合って、
思いっきり走りよってきて、勢い良く俺にしゃべりかけてきた。
「六角中に行きたいんですけど、一緒に行ってもよろしいですか!!??」
すごい剣幕だったよな・・・・
その時、は俺を先輩と間違えたらしい。さすがに、180近くあったからしょうがねーけど。
偶然にも同じクラスになってすっごい仲がよくなった。
マネージャーじゃないのに、試合の日には手伝いや応援に来てくれたり、ほとんど毎日、練習を見に来てくれたりした。
夏休みにはテニス部の仲間と一緒に海で遊んだりした。そして、家が同じ方向だから、毎日一緒に帰った。
愚痴も黙って聞いてくれるし、しょうもないこともちゃんと聞いてくれる。
ほんとイイ奴。いいダチ。
・・・・・・・・・んで、いつのまにか好きになっちまってた。
「なんか春だよね〜ほんと。花粉が気になるけどね〜」
「あ〜、花粉症か?」
「ほんとは、春って好きなんだけど、やっかいなものもくるからね〜乙女の敵だわ。マスクしないといけないし」
「俺は花粉症じゃないし、春は暖かいし、桜咲いてキレイだし好きだな・・・」
「春風くん、好きだもんね。この学校のお花見会」
ふと、立ち止まったシズは俺を見上げた。
「ってゆうか、春風くんって誕生日いつ?」
「9月29日!ほんとうは名前からして春なんだけどな・・・?」
ダビデにも言われたことがあったな、そういや・・・
じゃあ、黒羽春風じゃなくて、黒羽秋風じゃないの?って。
「優しく、時には強く、心地よく、暖かく・・・」
「なんで、知ってんの?この名前つけた理由・・・」
「だって、春風くん見てたらわかるよ?ちゃんとそういうふうに育ってるんだもん」
時々こいつは俺が驚くようなことを言う。
「ヘヘッ なんかはずいな・・・」
もう水平線で太陽が半分隠れていた。その夕焼けの中、二人で海沿いを歩く。
と同じように、俺も海の匂いって好きだ。なんか落ち着くんだよな。
「あっ、いいものみっけ!!」
浜辺に落ちていたピンクのゴムボールをひろったは、ニコニコして
「春風くん。ちょっと、遊ばない?」
「って、時々俺の犬にみえる」
「それって褒めてるの?けなしてるの?」
「褒めてるんだぜ?」
「うっそだ〜!」
「いいから、早く投げろって!!」
俺はシズを見ながら、後ろへバック。
「準備はいいかな?」
「どんとこいっ」
そして、思いっきりはとんちんかんな方向に投げた。
「とれるわけね〜だろ!!」
「意地悪言ったバツだよ!!」
「くそっ!!意地でもとってやる!!」
鮮やかなピンクのボールは、夕陽の中でも目立っていて見つけやすかった。
必死で追いつく。
視力がいい俺は、シズが目を丸くしているのが分かった。
「とれないと思った・・・春風くん凄すぎ」
「なめんじゃねーぞぉ?テニス部を・・・」
「じゃあ、思いっきりなげてみて?野球部に負けないくらいに」
「いいんだな?ほんとに投げるぞ?」
俺は某野球漫画の主人公のようにかっこよく投げた。
「わぁ!!!」
必死で俺のナイスな球をよけたは叫んだ。
「もうっ!!顔に当たったらどうするの!!!」
あ、怒っちまった。
「ごめん、ごめん!!!でも、本気でなげろっていっただろ?」
「限度があるんじゃない?お嫁にいけなくなったらどうするつもり?」
「・・・・・大丈夫だよ」
「私なんか一生いけないっておもってるんでしょう!?」
「いや・・・・・・・・・・・・・」
「俺がいるし」
「まさかアナタがもらってくれるの?春風くん?」
聞き返すなよ。恥ずかしい・・・・
「そうだよ・・・・嫌か?」
「このボールとれたら、考えてあげる!!!」
また、めちゃくちゃ言うだろこいつ・・・・
そして、いつでも走れるようにかまえた。
こうなったら、なにがなんでもとる!!
俺は両頬をペシペシと叩いた。いつも気合入れるときの癖。
「おっしゃ!!いつでもいいぜ?」
「いっくよ〜?・・・・・・・・・・・・・・・・・・エイ!!」
「オラ!!!!!」
?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・って・・・・・・・・・あれ?」
俺の手の中にはゴムボール。
「普通に投げれるじゃねーか・・・・」
を見たら笑っていた。
え?どういう意味なんだ?
・・・・・・・・・・・・・・いいってことか?
「ふつつかものですが、よろしくお願いします」
これが俺の人生最初の最後で、最大の告白になった。
十年後には、の子供とキャッチボールをすることになんだけど、
今の俺たちにはそんなことわからない。わかるわけない。
今はまだ、気持ちを伝えるだけで精一杯だからよ。
end
ハズカ死作品。